2006年の1月から6月にかけて書いた「ひとこと」を並べています。よろしければ読んでください。
6月18日
多くの方がご存知だと思いますが、
オーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督などを務めていた岩城宏之さんが13日の午前にお亡くなりになりました。享年73歳でした。
思い起こせば、自分の意思で初めて行ったコンサートが岩城さんとOEKとのコンサートでした。また咽頭ガンを克服して、フェスティバルホールの舞台に立った大フィル定期のベリオとカリンニコフ。どれも思い出深いものばかりです。
CDもこの人の涅槃交響曲は何度も何度も聴きました。
ここ数年の老け込み方は心配でしたが、幾度と病魔を克服してきた岩城さんなだけに「今度もきっと」と思っていたのですが、岩城さんは天国へと旅立ってしまいました。
もう彼の音楽を生で聴くことができないのかと思うと寂しくて寂しくて仕方ありません。
7月16日(日)に石川県立音楽堂コンサートホールで追悼演奏会、7月18日(火)に東京のサントリーホールでお別れの会が開かれます。行ける方はぜひ行って下さい。
岩城さんのご冥福を祈ります。
注目したいコンサートの話題です。
2004年にブルックナーの交響曲第8番のアダージョ異稿を世界初演し、05年には同じくブルックナーの交響曲第4番の国際ブルックナー協会全集版第3稿を世界初演した、内藤彰&東京ニューシティ管弦楽団のコンビがまた新たなブルックナーを聴かせてくれます。
・ブルックナー:交響曲第9番 (4楽章完成版キャラガン新版、かつ2楽章スケルツォのトリオ部新稿世界初演)
面食らいますよねー。どういうことなのか詳しく教えていただいたところ、第4楽章はキャラガンの新しい版による演奏で、第1〜3楽章はコールズ版(2000年最新版)を使用し、スケルツォのトリオをブルックナーが校正段階で没にした別の稿へと差し替えた演奏となるそうです。全4楽章揃えた上で、トリオの異稿を演奏するのは世界初演だそうです。
(キャラガン版の第4楽章は最新バージョンで、これだけでも世界初演となるそうです)
ただし、チケットの売れ行きやレコード会社の戦略など様々な事情により、どの版を使用するかは非常に流動的なんだそうです。
チケットが売れれば、当初の計画通りの版が使用される、とのことです。
そこで、この演奏会に興味を持った方は、ぜひとも演奏会に足を運んでみてください。
今年9月28日(木)の19:00に東京芸術劇場大ホールでの開演です。S席6000円、A席4500円、B席3000円、学生席1500円となっています。
(参考リンク:東京ニューシティ管弦楽団公式サイト)
6月6日
金聖響さん、「フラッシュ」デビューおめでとう!(笑)
(参考リンク:デイリー、ニッカン、サンスポ、スポニチ)
そんな下世話な話よりも、岩城宏之さんが重度の貧血で1週間ほど入院することになったことの方が大事です。もう73歳なんで、少し心配になってしまいます。
復帰は6月中旬だそうなので、再び元気な姿を見せてくれることを切に希望します。
(参考リンク:MSN毎日インタラクティブ)
さて、幾度となる発売延期の末、やっとこさ
・TOKYO FM 朝比奈隆1970年代ライヴ集成
が発売となりました。
去年の年末の発売予定だったので、約半年の延期となります。加えて当初含まれていた大阪フィルとのブル5がラインナップから抜け落ちたりして、色々あったみたいです。
今回BOX化されたことで、何か特典のようなものが付いているのか、と思いましたが、結局は実相寺昭雄監督による「朝比奈先生とわたし」という回顧録が寄稿されているのみでした。正直、あまり嬉しくないな……。
内容は既出の内容と重なる部分が多く、目新しいことはあまりありません。
それでも13ページ半にも及ぶ文章は大変楽しく読むことができました。特に、時代が生んだ“文人”達が次々と世間から去っていく現状に嘆息を吐き、音楽だけでない幅広い視野を持った新しい“文人指揮者”の登場を願って止まない件は深く同感できました。同時に、文人クラシックファンももっと増えて欲しいものですね。
さあ、近づいてきました、06年6月6日が。そう、“666”の日には何かが起こるっ!
―――いや別に、悪魔の子が生まれる訳ではなく、
・『英雄の生涯』『ティル・オイレンシュピーゲル』/朝比奈隆&大阪フィル
が発売されるだけですが。
それでも今から感動の予兆がして止まりません(誇張含む)、発売が楽しみです。
では、今週はこの辺で。
5月21日
6月下旬ではなくて、6月6日でした。
・『英雄の生涯』『ティル・オイレンシュピーゲル』/朝比奈隆&大阪フィル
いよいよ朝比奈さんによるR.シュトラウスの新譜が発売されます。
『英雄の生涯』は1972年10月3日、『ティル・オイレンシュピーゲル』は1975年11月28日にフェスティバルホールで収録されたものです。
『ティル〜』は「ブラビッシモ!」で先行配信されていましたが、両演奏とも今回が初出となります。
発売は大フィルレーベル、CD番号はGDOP2012、発売日は6月6日となっています。
(参考リンク:HMV、タワーレコード)
このCDは元シカゴ響プレジデントのヘンリー・フォーゲル氏が解説を書いているそうです。この人も折に触れて、『英雄の生涯』を聴いてみたい、と書いていたので、ライナーはきっと気合の入ったものになっていると思われます。発売が待ち遠しいです。
もうひとつ、大フィルのCDが発表されました。
・ブルックナー:交響曲第0番/下野竜也&大阪フィル
なんと、2005年11月17,18日にシンフォニーホールで行われた演奏がSACDとCDのハイブリッドで発売されます。
レーベルはエイベックス、CD番号はAVCL-25099、発売は7月26日となっています。
そうそう、CDパートはCCCDではないと思うので、安心しても良いと思います(笑)
(参考リンク:HMV、タワーレコード)
下野さんは今までナクソス「日本作曲家選輯」の大栗裕作品、池辺晋一郎の交響曲第2番、川久保賜紀さん(Vn)の協奏曲伴奏、といったCDが出ていましたが、今回はドイツロマン派の交響曲ですので、下野さんの実力が窺われるCDになるのではないかと思います。
私は実演を聴くことが残念ながら出来なかったのですが、聴いた方によると概ね好評でしたので、期待しても良いのではないでしょうか?
このCDも発売が楽しみです。
5月7日
先週、大フィルレーベルの先行配布について、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の演奏年月日が1974年と記載されてあった、と書きました。
これについてページの訂正が入り、「ティル」はやはり1975年11月28日フェスティバルホールでの演奏で、今回の先行配布には含まれていませんが、同CDに収録される「英雄の生涯」が1972年10月3日のフェスでの演奏だと、合わせて発表されました。
まあ大したことではないとは思うのですが、一応報告までに。
(参考リンク:「ブラビッシモ!」内の大フィルレーベル先行配布のページ)
それにしても6月下旬が待ち遠しいなあ。
遅きに失した気がしますが、朝比奈&大阪フィルのモーツァルト(大フィルレーベル)を聴きましたので、寸評などをひとつ。
曲目は交響曲第39番と40番だったのですが、メインプロである40番は何やら朝比奈色に無理矢理はめたような、遅くて重い音楽で、正直あまり楽しめなかったのですが、前プロである39番ではそのような堅苦しさが少なく、朝比奈さんにしては軽快な曲運びで非常に好感を持ちました。
何度も書いたことでしたが、ついに実現しなかった「朝比奈隆の軌跡2002」では今回取り上げた2曲と41番がプログラムに挙がっていました。
39番の軽快さが良かっただけに、この演奏に最晩年のあの透明さが加わったらどれだけ素晴らしいものになっただろうか、と思ってしまいました。
何はともあれ、折角の生誕250年なんですから、もう1枚くらいモーツァルトのCDが出て欲しいと思いませんか? 期待して待つとしましょう。(レクイエムなんか良いと思うんですが)
4月30日
世間ではGWらしいのですが、一体どこの国の風習なのでしょうか?(涙)
さて、音楽配信サイト「ブラビッシモ!」で、朝比奈隆&大阪フィル/ヨーロッパ公演の配信第2弾が始まりました。(期間限定で7月25日までだそうです)
1975年10月2日にチューリヒ・トーンハレで行われたライブの録音で、曲目は
・大栗裕:大阪俗謡の主題による幻想曲
・レスピーギ:ローマの噴水
・シューマン:交響曲第4番
・ワーグナー:《ニュルンベルグのマイスタージンガー》第1幕への前奏曲
となっております。同日にはウェーバーのクラリネット協奏曲(Cl:朝比奈千足)も演奏されていますが、こちらは今回配布されていません。
また4曲中「大阪俗謡の主題による幻想曲」は大阪フィル創立50周年記念のCDに収録されていましたが、他の演奏は初出となっています。
(参考リンク:「ブラビッシモ!」内の朝比奈隆&大阪フィル/ヨーロッパ公演2のページ)
またこれと同時に、6月下旬に発売予定となっている大阪フィルレーベルのR.シュトラウス集から「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」が先行配布されています。
・R.シュトラウス:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
演奏は1974年だそうですが、詳しい記録は分かりませんでした。ただ他の日では75年11月28日、82年10月8日にフェスティバルホールでの演奏が分かりました。
(参考リンク:「ブラビッシモ!」内の大フィルレーベル先行配布のページ)
で、さくっとひろい聴きしてみました。
ヨーロッパライブではシューマンの交響曲第4番がコーダでの鮮やかなアッチェレランドに驚かされました。03年に発売されたモントルーの演奏(大フィルレーベル)とはまた違うアプローチで、違った面白さがありました。
ティル(以下略)はこのひとらしい豪快な演奏ですが、リヒャルトらしい多彩な音色の変化があり、頑固一徹な固い表現ではありませんでした。また中間部で大きく盛り上がる所があり、聴いていてとても楽しい演奏でした。
Web専用配信と言い、CDの先行配信と言い、ブラビッシモ!は非常に新しい活動を行っています。料金も安いですし、興味のある方はぜひともチャレンジしてみてください。
(参考リンク:過去ログより「ブラビッシモ!」のライセンス購入体験記)
さあ、明日も6時から働くとするか〜。………。
4月23日
テレビ見てたらCMにマーラーの交響曲第8番の冒頭が使われていてちょっと驚いた石田です。
さて、1989年に朝比奈さんが新日本フィルと録音したベートーベン交響曲全集を聴きました。
7種類を数える朝比奈さんのベートーベン全集ですが、4回目となるこの新日フィルとのものは人によって最高の全集とあげられます。今回それがSACDと通常CDとのハイブリッドで再発売されました。
全曲を通しての印象は、低音楽器がずしんと鳴り、響きの隅々に力が漲っていて、非常に骨太の演奏となっています。また曲の終結部に明らかなクライマックスが描かれ、聴いていると次第に興奮してきます。
で、気になる音質の方ですが、だいぶ向上しています。とは言っても、いきなりエクストンサウンドに変容! とはなりませんが……。SACDで聴いた感じでは、少々平面的で野太いフォンテックサウンドは変わらないのですが、細かい音が聴こえるようになって、かなり臨場感が上がっていました。リマスター自身かなり自然な仕上がりになっていると思います。(元がデジタル録音なので限界がありますが)
演奏が良いので、まだ持ってない方はこの機会にそろえてみてはどうでしょうか?
これからGWを控えて忙しくなりますが、栄養ドリンクを飲んで頑張りましょう。
4月16日
なんか更新をサボっているうちに、アクセスカウンターが60000を回ってしまいました。約7ヶ月で、延1万人の方々に訪問いただけた計算となります。
この頃内容がめっきりしょぼくなったのにも拘らず、たくさんの方々にアクセスしていただいていることに深く感謝の意を捧げたいと思います。ありがとうございます。
生前、朝比奈とブルックナー演奏で双璧をなしていたヴァントがミュンヘンフィルを振った演奏がこのたびCD化されました。
手兵であるNDRの演奏ももちろん良いのですが、このミュンヘンフィルはこれまたブルックナー演奏の権威チェリビダッケが手塩を掛けて鍛え上げたオーケストラで、彼はすでに亡くなっていましたが、その残り香はまだまだ感じることができ、ヨーロッパ最高のオケのひとつと数えられていました。
ヴァントの客演によるブルックナーでは最晩年のベルリンフィルが非常に有名ですが、このミュンヘンフィルとのものはその美しさと精緻さで、どれもが名演奏との誉れが高く、長らくその市販化が待たれておりました。
ヴァントの最晩年と言えば、日本ではブートレックが乱発され、今回ご紹介した演奏もその中にしっかりと入っていましたが、このたびは初の正規盤発売であり、販売元は音質の良好さをアピールしています。
・ブルックナー:交響曲第8番/シューベルト:交響曲第8(7)番「未完成」
レーベル:PROFIL、カタログ番号:PH06008
録音日:2000年9月15日、会場:ミュンヘン(ブルックナー)
録音日:1999年9月28日、会場:ミュンヘン(シューベルト)
(参考リンク:HMV、タワーレコード、アリアCD)
・シューベルト:交響曲第9(8)番「グレート」
レーベル:PROFIL、カタログ番号:PH06014
録音日:1999年9月28日、会場:ミュンヘン
(参考リンク:HMV、タワーレコード、アリアCD)
気になる発売日は5月31日となっています。
ちなみにこのコンビによる演奏の批評を工房の中に載せてあります。CD菜園sのベト3と未完成にありますので、もし興味が湧いた方は読んでみてください。
去年の12月、惜しまれつつも現役最高齢だった92歳で引退したジャン・フルネのラストコンサートの模様がSACD2枚とDVD−V1枚のセットで発売されることが決まりました。
・ジャン・フルネ ラストコンサート
レーベル:フォンテック、カタログ番号:FOCD9270
管弦楽:東京都交響楽団、ピアノ:伊藤恵
録音日:2005年12月20日、会場:サントリーホール(SACD)
録音日:2005年12月21日、会場:東京文化会館(DVD−V)
曲目はSACD、DVD両方とも
・ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番
・ブラームス:交響曲第2番
となっていて、DVDの方にはこれにインタビュー映像がプラスされます。
これまた気なる発売日は5月20日となっています。
(参考リンク:HMV、タワーレコード、アリアCD)
なにやら高齢者ばかりに偏っているような気がしますが、気にしない、気にしない。
では今週はこの辺で、来週も高齢者の話題をお送りしたいと思います(笑)
4月1日
速報!
朝比奈隆と伝説的ピアニストであるルービンシュタインとの歴史的共演が、このたび大阪フィル交響楽団レーベルから発売されることが決まりました!
・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」
P独奏:アルトゥール・ルービンシュタイン、管弦楽:大阪フィル、指揮:朝比奈隆
録音日は1966年6月25日、場所はフェスティバルホール、レーベルはもちろん大阪フィル交響楽団レーベル、カタログ番号はGDOPO-2012〜3の2枚組、気になる発売日は7月9日となっております。
なんでも、長らく行方不明とされていた記録テープが大フィルの倉庫より奇跡的に発見され、今回のリリースに至ったそうです。
協奏曲の商品化は様々な契約上の問題があり、なかなか最後まで漕ぎ着けないそうですので、今回のリリースは正に快挙と言えるでしょう。
さあ、発売を楽しみに待とうじゃありませんか。
(参考リンク:HMV、タワーレコード)
[ヒント]日付
う〜ん、去年の切れには及ばなかったか。
クラシックとは少しずれた話題ですが、パソコン通信の大御所「NIFTY-Serve(ニフティー・サーブ)」が19年の歴史にピリオドを打ち、昨日閉鎖されました。
(関連リンク:CNET Japan)
私がここに入会した時は全盛期も過ぎ、インターネットの時代がスタートしていましたが、まだまだ個人でホームページを持っている人は少なく、ニフティの様々なフォーラムは私にとって大きな情報源となっていました。
特に、クラシック音楽のフォーラムは気になる演奏会の感想がちょくちょくアップされていて、非常に重宝していました。
これも時代の流れ、ですか。
ただ、当時活発な活動をされていた方がWeb上で未だに頑張っていらっしゃるので、自分も頑張って続けていこうという気になります。
今回は、花粉症でずびずびの石田がお送りしました。
3月19日
ネタがないので、お約束どおりの寸評です。
大植英次&大阪フィルのブルックナー/交響曲第8番聴きました。
うん、悪くないです。
朝比奈さんのノウハウがぎっしりと詰まった大フィルのパート譜(ハース版)を使ったそうで、ニュアンスの端々に朝比奈さんの香りがして、ちょっと嬉しかったりしました。
もっと嬉しかったのは、この朝比奈さん風味に各パートの精緻さが加わって、朝比奈最晩年の透明さとは少し違う透明感が出ていたことです。非常にフレッシュなイメージがし、朝比奈さんのパート譜を使いながら自分達独自のカラーを出すことに成功していたのではないでしょうか。
(独自のカラーを出せる自信がついたからこそ、この曲を前任者のパート譜で演奏したのでしょう)
全体の構成も太い芯を真ん中に通して、冒頭から終結まで一本道に駆け上っていくアプローチで、早めのテンポで最後までぐいぐいと引っ張っていくものでした。このあたりは非常に満足できました。
ただ、楽想の転換時に急激なテンポチェンジを行う所が散逸して、局地的に音楽の流れが変わってしまう点がブルックナーを聴く上で非常に気になりました。
“気分的インテンポ”がこの作曲家の曲では重要だと思いますが、現在そこまでの風格を求めるのには酷なのかもしれません。
大フィルの十八番としてブルックナーは外すことができませんから、音楽監督としてこの交響曲を提供する必要があるので、正直苦しいとは思いますが、やるからには大植さん独自のブルックナーを目指して欲しいと思います。
ショスタコ7番のライナーノートで東条さんが書いていましたが、朝比奈は遠くになりにけり、なのでしょうか。
録音の方はややボヤケ気味で、他の2枚に比べると若干聴き劣りしました。しかしストレスのない素直なミキシングだと思います。
またCDのライナーは池田卓夫さんが書いています。この中で、バイロイトは失敗した。大フィルの定期でベートーヴェンの交響曲第7番を取り上げたが、朝比奈さんの境地には至っていない。と全体の5分の3を割いて少々ネガティブな評論が展開されていました。
ここまではっきりと書いちゃうのは、評論としては大変好ましいのですが、CDの商品に含まれるライナーとしてはどうかなと思います。
一応、フォローとして、バイロイトは大植さんの芸風から見ると、こうなるのは分かってたはずなのに、後で叩くのはおかしい。ブルックナーの交響曲第8番は朝比奈さんの遺産と大植さんの才覚との幸福な出会いがあった。と書いていますが、行間に“本当は朝比奈さんのお陰だよ”という気配がビンビンします。
ただ、朝比奈さんがブルックナーを初めて取り上げたのが、今の大植さんと同じ46歳だったので、一歩一歩音楽の質を高めていって欲しい、との締めの言葉には同感できました。
振り返って、マーラー、ショスタコーヴィッチ、ブルックナーと聴いてきましたが、基本的なアプローチはどれも変化なしで、正直代わり映えはしなかったです。
彼の表現が一番はまるのがマーラーであることは間違いないです。そしてそのマーラー的なアプローチで成功したのがショスタコで、ややずれたのがブルックナーと言えるのではないでしょうか。色々な曲と色々なアプローチをどんどん試して欲しいと思いました。
バイロイトで今回成功をつかむことが出来なかったのは、この骨太一直線のアプローチをオペラでも(しかもワーグナーのトリスタンとイゾルテで)やっちゃったためだと思っています。
シンフォニーでは非常に面白いと思いますが、オペラはやはり山あり谷ありで緩急をつけてじっくりと盛り上げて行かないと息が詰まる(もしくは歌手がへばる)と思います。
この辺りは経験なのでしょうが、今の芸風にオペラで必要とされる有機的な潤いが加わったらもっと素晴らしくなるのではないでしょうか。
と、取り止めのないことを偉そうに書きましたが、愛と期待ゆえの毒舌ということで許してください。
今週はこのへんで。
3月12日
大植英次&大阪フィルのショスタコーヴィッチ/交響曲第7番「レニングラード」聴きました。
この曲はやたら大仰な表現を採った挙句、まとまりに欠けた取り止めのない演奏になりやすいのですが、この演奏は空々しいバカ騒ぎになったりせず、しっかりと地面に足を張った堂々としたスケールの演奏でした。
特に各パートの分離が非常に良く、透明かつ広々とした響きは、好録音も手伝って非常にスタイリッシュな仕上がりになっておりました。
例の「ちー ちーん ぷいぷい」のリズムでは音符の切り方がやや短いと感じるくらいで、全体的にオーソドックスな表現でしたが、曲全体の均衡が良く取れていて、時々首を捻りたくなる終楽章もきちんとまとめ切るあたりは特筆すべき所でした。
またダイナミックレンジが広く、大音響でのカタルシスはもちろんですが、ピアニッシモでの室内楽的な響きの良さも大変良好で(木管にもう少しデリカシーが欲しいですが)、良い意味で驚いてしまいました。
これだけの演奏は同曲のCDが沢山発売されている中でもなかなかありません。素晴らしい演奏です。
ライナーは東条碩夫さんでした。朝比奈さんの後を継いだ大植さんの音楽監督就任は大成功である、との内容で、バイロイト帰りの彼に暖かい拍手で迎えた聴衆は感動的であった、ともありました。その一方で、同コンビによるブルックナーの8番を聴いて、3年前に聴いたばかりの朝比奈さんとのブル8が遠い昔のように感じられた、との一文に私も時代の移り変わりを感じてしまいました。
次は(ネタがなければ)ブルックナーの交響曲第8番を取り上げたいと思います。
3月5日
先週、大植&大阪フィルの3種のCDを「全部聴いてから寸評を書きたいと」って書いた気がするのですが、最近物覚えが悪くなってしまい忘れてしまいました。
と、いうわけで上記コンビによるマーラーの交響曲第6番のレビューです。
・大植英次&大阪フィル…マーラー/交響曲第6番 イ短調「悲劇的」
きびきびとしたテンポで颯爽と進んでいきます。師バーンスタインのように粘っこいものはないですが、さっぱりしすぎて軽い響きになったりもしてません。中音域から低音域までがしっかりと詰まったなかなか充実した音楽となっていました。
音楽の構成は太く大きな一本の筋を曲の冒頭から終結まで貫いて、最後まで緩むことなく緊張感を保ち、ぐいぐいと音楽を引っ張っていくあたりは非常に良かったです。
幕切れのあたりなんか、ピシッときまっていてカッコ良かったですよ。
実演ではあまり気がつかないでしょうが、こうして録音物として聴いてみると、テンポの急緩が結構頻繁に変化していることに気がつきました。それなのに一直線にクライマックスへと突き進んでいるように感じるのですから、マーラーと大植さんとの馴染みの良さがうかがわれます。
ただ、これはシンフォニーコンサートなら大歓迎ですが、オペラとなると話が変わってきます。(この話題はブル8の時にでも)
ちなみにライナーノートは岡本稔さんが担当していました。
音質の方ですが、このレコードはCDとSACDのハイブリッド盤であり、今回両方とも聞いてみました。両者とも自然な音作りでなかなかの録音だと思いました。SACDで聞くと、音が繊細になり、臨場感がアップします。
次はショスタコの寸評をアップできたらいいなあ〜。
2月26日
週一更新でも歯がゆいのに最近隔週更新へと落ちぶれている石田工房です。
ネット上で音楽ファイルが買えるサービスが増えてきました。
クラシックも配信しているサイトはありそうでなかなかないのでありますが、以前にも紹介したぶらあぼのブラビッシモ!の他にオンキヨーも同様のサービスでクラシックを扱いだしました。
・e-onkyo music store クラシックコーナー
サイトをみると24bit/96kHzによる高音質配信(ただしWMAフォーマットです)も行うそうで、楽曲を提供するレーベルはナクソスやオクタヴィアレコードが上がっています。
コバケン&日フィルのチャイコフスキー5番なんかもラインナップに見つけました。新しい販売方法やコンテンツに興味がある方は一度覗いてみてください。
この欄でも何度か取り上げた朝比奈&新日フィルによる「TOKYO FM 朝比奈隆1970年代ライブ集成」の発売がずるずると延びていますね。ちょっと心配です。無事に発売されることを願うばかりです。
また大植&大阪フィルの3種のCDを何とか時間を搾り出して聴こうと思っているのですが、今はマーラーの6番を聴き終えたばかりです。全部聴いてから寸評を書きたいと思っていますので、どうかお待ちになってください。
2月12日
ご存知の方も多いと思いますが、日本作曲界の重鎮、伊福部昭氏が8日午後お亡くなりになりました。享年91歳。大往生です。
代表曲にはシンフォニア・タプカーラとかがあるのでしょうが、なんといっても「ゴジラ」などの怪獣映画の音楽、そしてそれらが宝石のようにちりばめられた組曲「SF交響ファンタジー」が忘れられません。あの土俗的な躍動感は幼心にもインパクトのある音楽でした。
心よりご冥福をお祈りします。
さて、大フィルレーベルから朝比奈隆&大阪フィルのモツ39、40が発売されたのですが、どうもこうも仕事が忙しいので、家に帰っておらず、まったく聴けておりません。
(いつものことと言いながら、もう何ヶ月も音楽らしいものを聴いていないので、さすがに禁断症状が出てきましたよ)
というわけで、ファーストインプレッションは少々お待ちになってください。(クラオタ失格だな)
1月27日(30日修正)
え〜っと
27日付のこの欄でクラウンレコードから朝比奈さんの新譜が発売されると書きましたが、関係者から連絡がありまして、現段階での公表は控えて欲しいとの依頼を受けました。
以上の理由により当欄から該当記事を削除しました。どうかご了承ください。
正式な発表がなされたら、改めてお伝えしたいと思います。
と、言うわけで「クラウンレコード、グッドジョブ」はおあずけ。
気を取り直して、大フィルレーベルの新譜情報です。
・モーツァルト…交響曲第39番、40番/大阪フィル
モーツァルト生誕250年に見事ぶつけてきました。
多いとは言えない朝比奈さんのモーツァルトですが、1991年11月6日いずみホールでの演奏がよみがえりました。
朝比奈隆の軌跡2002で企画されながらも、彼の死去で露と消えた思い出が脳裏に浮かびます。演奏はその10年前ですが、全盛期のものだけに期待は非常に大きいです。
発売予定は2週間後の2月10日、カタログ番号はGDOP-2011、レーベルはもちろん大フィルレーベルです。
(参考リンク:HMV、タワーレコード)
なお、モーツァルトの方は“モーツァルト選集1”と題されているので、これから続編の出てくる可能性が高いです。
同じいずみホールで演奏され、FMでも放送されたレクイエムが本命だと思いますが、ご子息と競演されたクラリネット協奏曲とかだったらかなり意表をついて面白いかもしれません。(調べてみたら意外と協奏曲の演奏が多いのに気がつきました。ただ協奏曲のリリースはソリストとの契約が難しいと聞いたことがあるので、望みは薄そうです)
それと、私はレコ芸を読まない人なので知りませんでしたが、大フィルレーベルからR.シュトラウスの発売が予定されていると教えていただきました。
どの曲がリリースされるのか、非常に興味ありますが、私はここで「英雄の生涯」と「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」のカップリングだと大胆予想してみました。さあ、当るでしょうか?
発表が非常に楽しみです。
1月22日
フォンテックから朝比奈さんのSACDが発売されます。
・朝比奈隆/新日本フィル…ベートーベン全集
おおっ! と驚いた方もいると思いますが(私だ)、これは1988年から89年にかけて録音された全集のSACD化でした。
しかしこの全集はたくさんある朝比奈さんのベト全でもNo.1に挙げる方もいる、大変充実した全集だと私は思います。これがSACDのハイスペックで聴けるのですから、期待してみようじゃないですか。
みなみに6枚組で従来のCDとのハイブリッド仕様、レーベルはフォンテックで、カタログ番号はFOCD9264となっています。
気になる発売日は3月の20日となっております。
(参考リンク:HMV、タワーレコード)
フォンテックさんにはぜひ最晩年に行った新日フィルとのベートーベンチクルスをCD化して欲しいものです。
1月5日
あけまして、おめでとうございます!
2006年が皆様にとってより良き一年でありますよう願います。
新年の挨拶を済ませたところで、去年の宿題を片付けます。
・下野竜也&大阪フィルの第九
・佐渡裕&センチュリーの第九
・尾高忠明&大阪フィルの第九
以上のレビューをアップしましたので、興味のある方はご覧になってください。
それでは新年もよろしくお願いします!