オーケストラ・アンサンブル金沢 第17回大阪定期公演

日  時
1998年9月23日(水・秋分の日)午後4:00開演

場  所
ザ・シンフォニーホール

演  奏
オーケストラ・アンサンブル金沢

指  揮
岩城宏之

Vn独奏
堀米ゆず子

曲  目
《 オール ベートーベン プロ 》
1.歌劇「フィデリオ」序曲
2.ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
3.交響曲第4番 変ロ長調

座  席
2階CC列53番(A席)


演奏会感想

§はじめに§(長文)

 開場まで時間が在ったので、向かいの公園のベンチで休憩してから入場。するとホテルみたいなロビーの脇でCDを販売していた。ベートーベンの交響曲全集発見。買うか? いや、今日の演奏次第だな。と言うことで取りあえずパス。

 30分前にホール内へ。会場内うろうろするお上りさん。中は意外と小さい。最前列なんか手を伸ばせば第1ヴァイオリンの足触れるぞ。嘘。舞台も小さい。そうか演劇をしないからこれで十分なのか。

 客席で腐るほどのパンフを読んでたら、ティンパニの人が太鼓の皮を様子見に来た。その時小さく、トン、トン、と叩いていたが、その音が頭の後ろからも聞こえて来たんでビックリ。粒のくっきりとした音だった。さすが音響に気を配ったホールだ。

 この時タイミング良く鼻がむずむずしてきたんでヘークショイ! とくしゃみをしたら、見事残響2秒、やるなシンフォニーホール。ここは舞台の音どころか客席の音までよく響く。コンチェルトの時、居眠りこいてる奴の寝息がよく聞こえたぜ。

 さて楽団員のみなさんが入場してくると暖かい拍手、特にコンサートマスターの人が入ってくると一際大きくなった。オケは2管編成の8,6,4,4,2タイプで、いわゆる小編成オーケストラ。

 私の席は2階で舞台に向かって一番右(と言っても真横から見る席ではなく奥の方)の席だった。垂直の背もたれがよろしい。もうちょっと腰骨をサポートしてくれた方が嬉しいが。2階席の前から3列目だったが舞台がよく見え、それほど不満ではなかった。「A席でこれかよ」とは思わなかった、と言ったら嘘になるが。

 客席は補助席の出るほぼ満席、年齢層は高かったけど、こんなものか。年配の人はネクタイを締めていたが、私の隣に座った青年はジーパンにTシャツ。……どうでもいいが風呂は入れ。

 楽団員の後に岩城さん登場。とても大きな拍手。私が日本人で好きな指揮者は朝比奈隆、外山雄三、そして岩城宏之の三人、次点で若杉弘、小沢はノーサンキュー。岩城さんが客席に向かって一礼。わーい、テレビで見たのと同じ顔だー。岩城さんの切れ味が鋭いのにどこかリリックな指揮、期待してます……。

  1. 歌劇「フィデリオ」序曲

     指揮者が背を向けると同時に拍手がやみ、タクトが振り下ろされた。
    「あれ? こんなものかいな?」
     なんかソツなくこなしているって感じ。アンサンブルはかちっとしていて、小編成オケに不可欠な音の精緻さは充分でているのに……。

     この曲けっこう燃える曲なのになあ。最初から飛ばすことはしないのかな?

  2. ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

     序曲が終わると第1ヴァイオリンが一時退場してソリストの場所を作った後、堀米さんを連れて岩城さん再登場。

     ティンパニの4つ打ちの後、木管が歌い出すがやっぱり固い。フルートなんかもうちょっと前に出ればいいのに。

     それよりもソリストの調子が出ていない。フレージングがぎくしゃくしてリズム感が薄く、ハイポジションでは音を鳴らしきっていない。うーむ……。

     しかし、第2楽章のラルゲット後半のソロでのppから音が美しくなり、ヴァイオリンが伸び伸びと歌うようになると、ソリストもノリノリ。アタッカで続けられた第3楽章では大いに盛り上がった。

     第1楽章のことはきれいに頭からすっ飛んで行った。とどめのカデンツァが素晴らしかった。あーよかった。一時はどうなるかと思った。

  3. 交響曲第4番 変ロ長調

     休憩を挟み最後の曲は全曲鼻歌で歌えるベートーベンのシンフォニー。こっちが惚れ抜いてる曲だけに、半端な演奏したらその場で帰ってやる位の気合で臨む。

     休憩の後コントラバスが1台加わり、弦が8,6,4,4,3となると、黒い森を思わせる序奏部が始められた。
    「おお!」
     前半と全然気迫が違う。前半はエネルギー温存してたな、こいつら。

     それだけあって演奏が最初の和音から違ってた。たぶん何度もやっているのだろう、みんながこの曲を知り抜いていると言う自信の溢れた演奏でした。やっぱ、そうこなくっちゃ。

     演奏はきびきびとしたテンポで進み躍動感に富みながら瑞々しく旋律を歌う、これぞ岩城流! しかしせっかくの小編成なんだから、もっと木管の旋律が浮かんできても良いのにとは思ったが。

     速いテンポだったので第4楽章のファゴット大変そうでした。その他木管ではクラリネットが良かった(弦は言う事無し)。事実、演奏後に岩城さんはクラリネットを立たせてた。

     全編に緊張感が満ち、演奏者全員燃え上がった演奏。最後の和音が鳴ると割れんばかりの拍手が起きた。私にとってはブラボー級だった(いや、言わなかったけどさ……)。

     私は惜しみない拍手をさせてもらった。「こんな演奏だったら交響曲第8番もきっとこのオケに合うだろうな、聞いてみたいな」と考えてたら、フルートがもう1人出てきてアンコールがかかった。「交響曲第8番より第2楽章」あまりにもツボにはまった選曲なので思わずにやけしまった。

     私はもっと拍手をしていたかったが、アンコールが終わると客もぞろぞろと退場。みんな結構ドライなのね。

§さいごに§

 実は生まれて初めてのコンサートでした。生はやっぱりいいねー、CDとは違った満足感がある。

 楽屋口で堀米さんを見ましたが、かわいい感じのお姉さんでちょっとドキドキ。岩城さんのサインをもらうために長蛇の列が出来てたが、サインペンとかなんにも持ってきてなかったので並ばなかった。

 結局、交響曲全集買ってしまいました。買いに行くと陳列分が売り切れていたので、売り子のお姉さんを地下駐車場にある楽団の車まで走らせてしまった。ぜーぜー言って段ボール抱えて来た君に乾杯。

 (後日、交響曲全集を聞いたがやはり4番がベストだった)

 総じて、私にとっては大変満足したコンサートでした。さあ、次はブルックナー だ!



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