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第43回大阪国際フェスティバル
NHK交響楽団

日時
2001年4月21日(土)午後6:00開演
場所
フェスティバルホール
演奏
NHK交響楽団
独奏
クリスティアン・テツラフ(Vn)
指揮
ヘルベルト・ブロムシュテット
曲目
1.ゲーゼ…序曲「オシアンの余韻」
2.シベリウス…ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
3.ニールセン…交響曲第5番
座席
1階G列Rサイド9番(S席)

まずは

 このレビューには前編があります。
 《 朝比奈&大フィルのブルックナー5番 》
 ですので、先にこれをご覧になった方が私のバカっぷりがわかると思いますのでどうぞ。
 それにしてもこんなハシゴをしたのは私だけでしょうね。ははは。でもニールセンマニアを自称するわたくしめとしては、ニールセンの5番をどうしても聞きたかったのです。

ロビーにて

 シンフォニーホールから走って(笑)フェスティバルホールに飛び込む。7時ちょうど。ロビーではステージの拍手が天井のスピーカーから流れていました。ここで15分の休憩を告げるアナウンスが放送されます。どうやら後半のニールセンには間に合ったようです。セーフ。
 息を整える意味も込めてロビーをうろつくと、前日に突然世を去ったジュゼッペ・シノーポリ氏についてのブロムシュテットさんのコメントを発見しました。
 要約すると、自分の後任でドレスデンスターツカペレの首席指揮者になったシノーポリの死を悼み、音楽を愛した彼に今日の演奏を捧げる、という内容でした。
 彼の愛し方はちょっと歪んだ愛し方だったかもしれませんが(笑)、私もシノーポリの追悼をする気持ちで演奏会に臨みました。

ニールセン…交響曲第5番

 ブロムシュテットさんの演奏を聞くのもほぼ2年前のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の京都演奏会以来です。元気そうでなによりです。ちょっと頭薄くなったかな? また4番の方なんですが、ニールセンのCDについてのレビューもありますのでよければ合わせて読んでください。

 ビオラの漂うような刻みから曲が始められましたが、かっちりとした音楽造りでたくましさを感じさせるものがありました。また今日はN響が低音楽器からのどっしりとした響きを出していましたが、このブロムシュテットさんらしからぬ音はこの人の新たな展開の現れだったのでしょうか? この人もともと腰高な音でしたが、サンフランシスコ響時代ですっかり音が軽くなってしまったので、この変化はとても好ましく映りました。

 一方、N響の方は非常に自発心に溢れた演奏を行っていて、ニールセン独特の複雑に絡み合う旋律線が生き生きと描かれていました。この美点は第2楽章でのフーガ的な展開部で最大に発揮できていました。しかし第1楽章第2部での小太鼓ソロ終盤にある劇的に盛り上がるところやクライマックスたる第2楽章コーダでの本来爆発すべきところが、その手前でかなりテンションが上がってしまい、肝心な場所での感銘がやや薄れてしまったのが残念でした。(ひょっとするとフーガのところも、すべての旋律線が同等に鳴っていたため初めて聞く人にはかなり解りづらいものだったかもしれません)
 また各奏者は要所でこそ指揮者に委ねていましたが、非常に気迫のこもった演奏を繰り広げていて、あの広大なフェスを鳴らしきっていたのは感心しました。しかしオケ全体としてみればシレッと演奏しているように聞こえ、不思議な感じがしました。これがオーケストラのカラーと呼ばれるものなのでしょうか。
 (大フィルのようにそこそこの演奏しても下手に聞こえちゃう個性もある)

 いろいろ書きましたが、これだけ完成度の高い演奏はそう聞けるものではないでしょう。ニールセンの演奏にポリシーを懸けるブロムシュテットさんだからこその演奏だったと思います。

曲が終わって

 力強く曲が締めくくられると、余韻を味わってからブラボー屋の歓声とやや元気のない拍手が送られました。「ブラボ〜!」の声の主がどれだけこの演奏を理解していたのかは解りませんが、わずかのニールセンマニア(私?)を除くとほとんどの人は理解しづらいものだったのではないでしょうか。
 ブロムシュテットさんがコンマスに拍手を求めるとき、切れた弓の毛を「おやまあ」とむしってあげたとき会場から笑みがこぼれました。他にも花束を贈呈する女の子が登場するタイミングを与えるため舞台袖を覗き込んだりするなど、このひとの仕草には愛情と愛嬌があります。ブロムシュテットさんのこういうところ大好きです。
 何度も、何度も答礼に現れてくれましたが、そのうちN響も解散して演奏会の幕が降ろされました。

おわりに

 初めてこの曲を聞いてそのすべてが解るとは思いにくいのですが、「この曲おもしろいやん」と思ってくれる人が少しでもいてくれればいいなあと思います。
 今日の演奏会を聞いてみて、この曲けっこう実演映えするということが解りました。(メチャクチャ難しいけど) そこで在関の各オケにひとこと言いたいです。
「ぜひニールセンを取り上げて下さい! お願いします」

 総じて、ニールセンが聞けてよかったよかった演奏会でした。

 さて次回は藤岡幸夫&関西フィルによるみどりの日コンサートです。
 のってる若手のひとり藤岡さんの演奏を初めて聞くこととなり、大変楽しみにしています。


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