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ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
京都演奏会

日時
1999年5月3日(月・祝)午後5:00開演
場所
京都コンサートホール大ホール
演奏
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
指揮
ヘルベルト・ブロムシュテット
曲目
1.ハイドン…交響曲第104番 ニ長調「ロンドン」
2.マーラー…交響曲第1番 ニ長調「巨人」
座席
1階13列18番(SS席)

まずは泣き言を……

4月26日の大フィル第327回定期を聞きに行くことが出来ませんでした。ここ2ヶ月ほど祝日はもちろん日曜日も仕事でとても行ける状態じゃなかったんです。

あれほど気合い入れてゲットしたチケットだったのに、朝比奈隆のブル4だったのに……。な、情けない。うっ、ううっ……、ごっくん。

さて、気を取り直して。行って来ました京都に。さすがゴールデンウィークということで、結構な賑わいでした。暖かくて良い天気でしたもんね。

今日はいつもの駄文な長文は控えて本文のみをずばっと書いて行きたいと思います。

ハイドン…交響曲第104番 ニ長調「ロンドン」

ものすごく読み応えのあるプログラム(開演までに読み切れなかったのは初めてだ)を手に4時半頃座席に着いた。

弦の人数を減らしたこじんまりとした編成のオケを前にブロムシュテットが登場しました。写真でよく見る顔と同じでした(当たり前だ)。

ほぼ満席だった客席からの大きな拍手に笑顔で応えると、クルリと背を向け演奏を始めました。人数が少ないせいか、舞台には指揮台がなく、ブロムシュテットは指揮棒を持っていませんでした。

ここでライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の大きな特徴を述べるとすると、弦の配置が第1Vnが左、第2Vnが右の古典的な配置になっていることです。第2Vnの人には演奏しにくいでしょうが、個人的にはこっちの配置の方が好きです。

演奏自体は内声部をたっぷりと鳴らし、それでいて各声部を明晰にしたきびきびとしたものでした。弦がかなりの分厚さで鳴っているにもかかわらず、華やかで透明感のあるハーモニーは好感が持てました。

曲についてのうんちくを簡単に書くと、この曲はハイドン最後の交響曲で1795年に初演されています。大変充実した内容を持ち、ハイドン最後の境地を滲ませています。当時25歳だったベートーベンに強い影響を与えました。5年後にベートーベンは第1番を完成させます。

弾むようなメロディと明晰な響き。特に第2楽章のリズム変奏がウィットに富んで楽しいです。

マーラー…交響曲第1番 ニ長調「巨人」

休憩を挟み後半へ。いきなり人数が倍ほどになっていて面食らう。今度は指揮台が中央に置いてあって、ブロムシュテットも指揮棒を持っての演奏でした。

まず先に気になった点を3つ書いておきます。(ケチつける方が簡単だからね)

1つ目は第1楽章の主題提示部。ここのテンポが序奏部を引きずってしまって、曲全体のテンポ設定から言って少し遅かった。だから再現部が逆に早すぎる印象を持ってしまった。また提示部最後でのテンポアップは少々オーバーかなと思ってしまった。第1楽章をインテンポで進めるようになるとスケールが大きくなるんだが、まだ無理か。

2つ目は終楽章。コーダのファンファーレが鳴るところへの持って行き方がちょっと弱かった。中間部でのファンファーレの方がぐっと盛り上がった。

3つ目はホールのことかも知れませんが、第1Vnの音があまり響いてこなかったことです。どうもステージ奥にいる楽器ほど残響が大きく付くみたいで、手前にいる第1Vnと第2Vnは打楽器、管楽器に比べて豊かには聞こえませんでした。しかし第2Vnは古典配置では奥に向かって音が出るため気にならず、第1Vnのみが目に付く格好となりました。しかしそれも第2楽章になる頃には楽器自体の音量で残響をカバーして、以後気にならなくなりました。

と、書きましたが演奏自体は大変良かったものです。

第1楽章のコーダなどは金管の咆吼が素晴らしく、聞いてて頭が真っ白になった。特出すべきはトロンボーンとチューバでホントダイナミックに鳴らしていました。

今日最高の出来は第3楽章の中間部で、速いテンポなのに哀愁のこもった心に滲み入るような歌い回しと弦の美しさはたまりませんでした。また終楽章へのブリッジでは、バチで叩くシンバルの音があの世から聞こえてくるような虚ろさを感じさせて身震いがしました。

終楽章のコーダではホルン8人が起立してコラールを吹き、大きなクライマックスを描きました。

そしてアンコール

会場を包む大きな拍手に何度も何度も呼び出される指揮者。しかし「今日はオケを誉めて下さい」と言う感じで一歩引いた控えめな感じでした。

そしてオケのメンバーを次々と立たせていましたが、金管部隊の人達が立ち上がった時はとても大きな拍手と歓声が飛んでいました。まったくその通り。また、コントラバスのトップが立ったとき、指揮者が「ソロ、危なっかしかったけど、ちゃんと決めたでしょ」とジェスチャーを入れたときは会場から微笑みがこぼれました。

その内舞台袖から花束を持った和服の娘さんが二人登場し、指揮者とコンマスに手渡しました。(この時のお辞儀の仕方が京都人らしかった) 指揮者はその花束を第2ヴァイオリンのTomiyasu-Mihoさんに手渡しました。(プログラムに来日メンバーの名前が書いてありましたが、ファミリーネーム・ファーストネームの順で書いてあった。日本文化に合わせてくれたのですね)

鳴り止まぬ拍手にブロムシュテットさんが足早に舞台袖から現れると、第1Vnの肩を叩きながら楽団員に「2,2」と人差し指と中指を立てました。アンコールです。

マーラー…交響曲第1番ニ長調「巨人」より第2楽章

もうだいぶ疲れているのかパワーはなかったが、リラックスしたものでした。

いつも思うことだが、マーラーは編成が特殊なためアンコールをしようにも適当な曲がない。まさかアダージェットをする訳にもいかないでしょう。(アンコールにしては長すぎる) 今日もアンコールなんかないと思っていただけにこれはとても嬉しかった。

再び起こる大きな拍手に応える指揮者。最後に指揮者が天井を手で差し示し「素晴らしいホールです」と褒め称えるように拍手をして解散となりました。

さいごに

奇をてらわずに堅実な音楽を聞かす所などはさすが正統派です。しかしまだ音楽に焦って先走るような印象が残ります。(これが宇野ちゃんの癇に障るんだろなあ) もっとどっしりと落ち着いて出来たらすごいものになるんじゃないかな。中身が詰まって分厚いのに華やかで透明な響きがするから余計にそう思うのです。

それにしてもブロムシュテットさんは今年で72歳のはず。全然老け込んだ所がなく、とても若々しい指揮でした。

総じて、誠実で堅実な演奏会でした。

さて、ゴールデンウィークが明けてすぐの日曜日は朝比奈隆のベートーベンです。この前の京都公演が良かったため、期待大です。今回はきちんと行けると思いますので楽しみにして下さい。


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