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ザ・シンフォニー特選コンサート Vol.7
井上道義/ローマの松

日時
2004年2月22日(日)午後3:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮
井上道義
曲目
1.R.シュトラウス…交響詩「ドン・ファン」
2.R.シュトラウス…歌劇「サロメ」より
3.ビゼー…歌劇「カルメン」より
4.レスピーギ…交響詩「ローマの松」
座席
1階I列21番

はじめに

 雨が降りそうで降らない、蒸し暑く重苦しい天気の中シンフォニーホールへと向かいました。
 お客の入りはほぼ満員で、ステージでは何人かの楽員が本番前のおさらいをしていました。
 今日のコンマスは去年の第9と同じ崔文洙さんでした。
 ローマの松は4年前近くに佐渡裕さんの指揮で同じ大フィルの演奏を聴いてます。あの時の大爆発と言えるクライマックスは鮮明に覚えていますが、さてさて今日はどんな演奏になるのでしょうか。
 ちなみに今日のプログラムは男女の官能的と言える愛を題材とした曲を3つとド派手な「ローマの松」という組み合わせです。

まとめて全部

 足早にステージへ現れた井上さんは客席を見渡し、礼をすると客席に拍手が残っていましたが、さっと演奏を始めました。
 ローマの松以外はタクトなしの指揮で、どれも出だしは速いテンポで切れよく始められました。その一方じっくりと聴かせる所ではググッとテンポを落とし、しっとりと叙情的に音楽を進めていきます。しかしそのテンポの緩急に不自然さはなく、それぞれの部分が強い説得力を持ちながら、有機的なつながりがありました。
 大フィルの方はこのオケらしく、中低音からずっしりと鳴り響き、各楽器の音色が充分に溶け合った良い音色をしていました。この音色は大フィルらしいと感じましたが、同時に朝比奈時代とはほんの少しだけ違って、巧さと華麗さが加わっているような気がして、微妙に嬉しさと寂しさを感じたりしました。

 各曲で印象的だったことを挙げると、ドン・ファンではコーダでの暗さと、サロメではちっとも舞踊的ではなく、もの凄く気味が悪い音楽になっていたことと、カルメンでは木管のアンサンブルが非常に素晴らしかったことが挙げられます。
 今日のカルメンは組曲からの自由な抜粋で、1.第1幕前奏曲の後半 2.アラゴネーズ 3.ジプシーの踊り 4.間奏曲 5.第1幕前奏曲の前半 と言う選曲でした。

 最後の「ローマの松」では舞台裏のトランペットが微かに聞こえる所での遠近感とこの時の弦の美しさ、鳥の声はスピーカーで流していたのでしょうか? また各楽想で描かれる意味深さはとても感心しました。
 最後のクライマックスでは井上さんがオケを煽りまくっていました。それに応えるように大フィルも音量を上げていきますが、井上さんの要求するレベルまでは達していないようで、井上さんは煽るのを止めませんでした。(大音響でしたが、爆発とまでは行かなかったです)

フェイント

 続けられる拍手の中、井上さんが指揮台の上に素早く上がり、タクトを構えると拍手がサッと静まります。
「と、ここで何かすると思ったでしょうが、松・竹・梅のうち一番良い“松”を先にやっちゃいましたので、今日はなしです」
 とスピーチをすると、大きな拍手のなかステージも解散となりました。
 それにしても答礼の際、1st.ヴァイオリンを立たす時に両手で髪を撫で付けるジェスチャーをしたのは、コンマスである崔さんの髪型を揶揄したのですか?

おわりに

 両者を比べるのはどうかと思いますが、クライマックスの爆発力ではさすがに佐渡さんの方が良かったです。しかし個々のニュアンスの意味深さとそれらの有機的なつながりの良さでは井上さんの方が良かったと思います。

 総じて、派手さは控えめ、コクは充分な演奏会でした。

 さて次回は金聖響&センチュリーによるブルックナーの交響曲第4番です。去年のシリーズと比べて曲の規模がグッと大きくなりますが、どのような演奏になるのか楽しみにしています。
 ……と書いたのですが、都合がつかず行けなくなりました。ですから次の演奏会はハイティンク&ドレステンの大阪公演となりました。


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