年頭でのジュピターが大変よかったセンチュリーによるシューベルトの「グレイト」です。この曲に関しては2年前の朝比奈&大フィルの演奏が忘れられません(マジでCD化希望!)が、今日の彼らはどんな演奏を聞かせてくれるのか、大きな期待を持ってシンフォニーホールへと向かいました。
また2日前の大フィル定期でもありましたが、今日の演奏会も録音されるみたいです。装置が大フィルの時とまるっきり同じだったので会社が同じかもしれません。現在センチュリーがベーレンライター版ベートーベン交響曲全集をライブノーツで録音しているのでひょっとすると今日のもそのライブノーツかもしれません。
竹澤さんのヴァイオリンが素晴らしかった。
最初のひと鳴りから曲が終わるまで、その集中力と気迫に引きずり込まれてしまいました。バルトークと言うと聞いてるうちにしかめっ面になるものですが、今日の竹澤さんの演奏はそんなバルトークの音楽がジーンと心に染み込んでくるものでした。滅多に聞けるものではありません。
センチュリーも見事なサポートで、曲の最後なんかものすごい盛り上がり方でした。演奏が終わると爆発するような拍手が起こったことは言うまでもありません。
バルトークでもこんなことが起こることがあるんですね。
この前発売された、このコンビによるベートーベンの1番&3番のCDですが、これは今話題のベーレンライター版を使用したものです。
それでかどうかは解りませんが、今日のシューベルトもそのベーレンライター版を使用するそうです。(ブライトコフプ版との違いなんてまったく解りませんでしたけど)
さて、高関さんが下手から登場して指揮台に上がると、譜面台上に開かれたスコアをしばらく凝視していましたが、パタンと楽譜を閉じ、さっと指揮棒を構えました。青色の表紙がまぶしかったです。
ホルンのフレーズに微妙なディミヌエントを掛ける序奏を耳にして、これだけ細かい気遣いをしているのならこのグレイトもバルトーク同様すごいものになる、と期待に胸が膨らみました。第1主題に突入する所なんか「おおっ!」と思いました。
しかしその主題提示部を聞いているうち、なんだかテンションが下がっちゃいました。微細なコントロールが入っていたのは序奏部だけで、あのホルンの音形も以後の音楽の展開においてどういう意味付けだったのか解らなくなってしまいました。またコーダで序奏部のホルンが帰って来ますが、テンポをまったく落とさずそのまま突っ切って終わりました。ブラームスの1番でも同じですが、第1楽章は序奏部を最後に回帰することでシンメトリックな構成をしているのです。
ひょっとすると高関さんは楽譜にそういった指示が書いてないからやらなかったのかもしれませんが、シューベルトは同時代のベートーベンに比べてずっと古風な書き方をする人ですから、“第2主題はテンポを落とす”とか“同じフレーズが出たらテンポも同じにする”とかはお約束だと思って、わざわざスコアに書かなかっただけかもしれません。
これら楽譜の指示に盲目的に従うのと、検討し咀嚼して受け入れるのとは随分と違ったものになると思うのですが、実際はどうだったのでしょうか。
全体的には速めのテンポでキリリとした音をした演奏でした。しかし構成がゆるかったせいか、なんか聞いてるうちにだらけてしまいました。あ、繰り返しはすべて実行してましたが、それは気になりませんでした。
なにより致命的なのは音楽全体に生命力が感じられず、のっぺりとした印象を結局最後まで引きずってしまいました。
いまだ耳の奥に残っている91歳のおじいちゃんがやった演奏のほうが断然生き生きとしていました。
曲は終わると大きな拍手が起こりましたが、前半ではあった熱狂的なものは随分と薄くなってしまいました。
時間もすでに9時を大きく回っていましたので、答礼もあっさりとしたものとなりました。
まあこういうこともありますか。
総じて、竹澤さんバンザイな演奏会でした。
さて次回は第2回現代日本オーケストラ名曲の夕べです。
今年のテーマである“Go! Go! 隆.”のひとり、吉松隆氏の曲が掛けられるのが一番の楽しみですが、その他の曲も非常に興味の引かれるものばかりです。ゲロゲロなものはないと思われますが、未知の曲が多いだけに聞いてからのお楽しみです。
またこの演奏会に取り上げられる作曲家のトークが付いていることも楽しみのひとつです。作曲家の生の声を聞くなんてチャンスは滅多にあるものではないでしょう。
と、上には書いてありますが、結局行けませんでしたので、次回は朝比奈御大のブルックナー8番となります。
当たり外れの大きい昨今の御大ですが、この日は大当たりになることを期待しております。