気が付けば、この演奏会は私が足を運んだ60回目のコンサートでした。98年に10、99年に19、そして今年は36の演奏会へ行くつもりですが、少ないですか?
開演10分前に座席に着くと、ステージ上では園田氏と北原氏、そして司会者によるプレトークが行われていました。ちっ、知ってればもうちょっと早く来る努力したのになあ。チラシに書いとけば多少客の入りも違っただろうに。
このプレトーク、6時半からやってたそうですが、その内容のほとんどは聞けませんでした。しかしただ一つだけはかろうじて聞くことが出来ました。
司会「園田さんは今年になって、関西の3つのオケ(センチュリー、シンフォニカー、関フィル)と協演したわけですが、これらのオケの違いはどんなものでしたか?」
園田「覚えていません(キッパリ)」
ナイスな答えです。
前半はオケだけによるプログラム。
最初のひと鳴りが響くと、「あちゃ〜」頭を抱えてしまった。何と言うかアンサンブルが稚拙なのである。ひどい言い回しをすればプロのレベルではないのである。
この日の関フィルの編成は2管編成で、弦が12−10−8−7−6人の大きさだった。これは大阪センチュリーと同規模であるが、音の精緻さがまるで違っている。
このオケは数年前に倒産の危機が噂されたが、……う〜ん、それもある程度は仕方なしと思えなくもない。
ただ演奏に対する必死さは良く伝わってきて、交響曲第4番でのコーダではヤマを形作ることに成功していた。情熱のない演奏を毛嫌いする私にとってこれは好ましいことなので、あとは常任となる飯守さんにしごき上げられることを期待しよう。
1階席の前の方(定期会員の席)からは「ブラボー」の声も飛び、なかなか良い雰囲気で後半に臨むことができそうだった。
さて、今日のメインである園田のピアノだが、まず最初にその音色の柔らかさに驚かされる。最近のピアノ演奏はベートーベンらしい迫力を出そうと鍵盤をひっぱたくような轟音を立てるか、一切の感情を切り捨てた硬質なタッチが主流だが、彼のピアニズムはそのどちらでもなかった。
アタックはきつくなく、高音から低音までバランス良く鳴らす。それで優しく鳴っているのに音はバックのオーケストラ以上に良く通り、ピアノ演奏にはちょっとだけ広いと思われるシンフォニーホールを充分に鳴らすものだった。
また現役ピアニストとしては高齢に属しているはずなのにテクニック的に不安になることは全くなく、曲の構成を把握しそれを充分にこなして表現してくれることも合わせ、どっぷりと園田の世界に浸ることができた。
演奏が終わると大きな拍手と歓声が起こり、ソリストを何度もステージに呼び出すものとなった。
またオケの方も熱のこもったサポートをしていたと言える。
総じて、“園田高弘、今なお健在”を認識させられた演奏会でした。
え? ひとことも指揮者についての言及がないけど、どうだったのかって?
「覚えていません(キッパリ)」
さて次回は朝比奈隆の軌跡2000の最終回、ベートーベン交響曲7番と8番です。でもアップはこの次のコンサートだったフェスティバル名曲コンサートの「カルミナ・ブラーナ」の方が先になりそうです。どちらもお楽しみに。