現在、このコーナーの更新が滞りまくっていますが、これから異常なほど立て続けて演奏会に行く11月攻勢に向けて、こんなことじゃ「後で泣きを見るだろうな」と思いつつ、いま途方にくれています。トホホ。
……どうしようもない話はここで切り上げて、本題にサッサと移りましょう。
今日のソリストは佐々(さっさ)女史で音大の先生をしているそうだ。コバケンと何度も競演しているそうだが、今回初めてこの人の音を聞く。
適度な湿り気を持ちながら、比較的軽やかにピアノが鳴る。個人的にモーツァルトにはもっと水晶がコロコロと転がるようなアタックが立ちながらそれがでしゃばらないタッチと、純粋で一切の人間臭のしない透明な音色を求めてしまうが、今までそんな演奏聞いたことはない。だから若干の不満は感じながらも、今日の演奏はなかなか良い部類に入るのではないかと思った。
ここ数回のコンサートではソリストの出来にまったく満足できなかっただけに今日の佐々の演奏はとても楽しむことができた。
TV番組の「料理の鉄人」で大仰に流れるコーラスでご存知の方もいるだろう、もはやスタンダードになったといっても過言ではないオルフの傑作が今日のメインだ。
息子ザンデルリンク(トーマス・ザンデルリンク)の指揮は一昨年のブルックナー以来だが、この人がシンフォニカーを振るとやはりこのオケの音が変わってしまう。響きは薄いものなんとなくロシアの匂いがするのだ。それに彼が音楽監督であるためかオケ全体に良い緊張がある。本名などの時に感じる「一緒に音楽を創って行こう」という空気がなくなる。結果的に今日の音の方がワンランク上であることは言うまでもない。これも指揮者の実力だ。
構成が単調になる中間はさすがにタレ気味だったが、それ以外の部分では力強く音楽をドライブして行った。
特にアンサンブルが粗雑で声としてのまとまりを欠いでいたコーラスを要所々々で締め上げて、あれだけの音楽を引き出した手腕はみごとだった。
曲冒頭の旋律が終曲で回帰すると演奏もヒートアップし、ぐぐっと盛り上がってこの一大カンタータの幕が降ろされた。
大きな拍手と歓声が起こったのは、この演奏では当然の結果だ。久しぶりにこのシリーズを聞いて、満足しながら帰路に着くことができた。
今日の演目はピアノコンチェルトとカルミナ・ブラーナだけのはずだったのですが、嬉しい追加がありました。誰もが知ってる名曲「エリーゼのため」です。
オケが沈黙して、バリトンの田中さんが良い感じでソロを歌っているというバリトンにとって最高の聞かせどころで、あの有名な旋律が鳴り響きました。
絶句。
私は直前にあったフルートのデュオが似たようなメロディだったので、2秒ほど「変わった所から聞こえるな。楽器はなんだろう? フルートか?」と思ってました。
客席も最初はあまり気づかなかったようですが、やがてビリビリビリと緊張感が走り抜けました。
田中さんなんか「死なす」とでも言いたげな目でにらんでました。
まあこんな事ここで言ってもしょうがないんですけど、なんとかなりませんかね?
今回のアンコールは事前に予告されていて、ロビーに楽譜のコピーが置いてありました。
With You Smile
曲自体は以前の歌劇「カルメン」の時と同じでしたが、さすがトーマス、オケに対して(特に打楽器陣に対して)細かいくらいの指示を飛ばしてました。事務局から推されたアンコールと謂えども手は抜きません。そのためオケがキリッとしていてとても聞かすものになりました。
するとそのうちティンパニの花石さんが頭の上で大きく手を打ち始めました。それを見て客席からも徐々に拍手が沸き起こってきて、手拍子の大合唱が会場を包んでいきました。
こんな時の手拍子は大抵リズムがばらばらで演奏者が困ってしまうんですが、今日のは割と良い感じで気分良く演奏できたみたいです(ザンデルリンクさんを除く)。
このアットホームな雰囲気はこのコンサート独特で他では得がたいものだと思います。
低料金で名曲を聞かせてくれる「フェスティバル名曲コンサート」も今回で今年分が終わりました。なんとか来年も継続されるようですが、企画自体は大変素晴らしいものなのでぜひともこれを続けていってほしいものです。(私は行きませんけど)
総じて、もうひとつはじけたものが欲しかった演奏会でした。
さて、次回は朝比奈&大フィルによるブラームスのアルトラプソディと交響曲第2番です。新日本フィルとのチクルスも進行中でありますが、気心知れたオケを相手にどのような音楽を聞かせてくれるのでしょうか? 楽しみです。
また同じコンビによるベートーベン交響曲7番と8番も合わせてお楽しみください。