オープン当時は東洋随一の音響を誇り、音楽の殿堂と呼ばれた大阪フェスティバルホールですが、50年の年月が経ち色々とくたびれた感じがしておりましたが、オープン50周年を期にビル丸ごと建て替えの再開発を行うことが決定し、この日がこの姿のフェス最後の演奏会となりました。
ホールゲート前の通路には50年の歴史を示すパネルが展示され、開場までのひと時、じっくりと拝見することが出来ました。
ちなみに最多出演はさだまさしさんでした。だいたい月一で出演しないといけない計算でしたが、そんなにコンサート開いていたんですね、気付きませんでした。私は大阪フィルが断トツで最多だと思っていたのですが、オーケストラはカウントされなかったのでしょうか?
あと、本来ならこの演奏会には来られないはずでしたが、チケットが1枚余っているからとお誘いを受け、入場することが出来ました。この場を借りて重ねてお礼申し上げます。
それなのに、3日連続で人ごみの中、ほっつき歩いたせいか、午後になって急に咳込み始めてしまいました。な、何たる不覚……。演奏会中はずっとハンカチを口に当てての鑑賞となりました。周囲の皆さんご迷惑をお掛けしました。
全体の印象は1日目である昨日の演奏とほぼ同じなので、ここでは差異があった部分を書きます。
まず、昨日の演奏が良い練習になったのか、音色の練り具合は今日の方が良好でした。
またテンポも少し速めに取り、音楽がよりさらさらと流れている感じがしました。
あ、そうそう第3楽章のホルンは今日はちゃんと出来てました。
鳴り止まぬ拍手が続くなか、私は「どうせ蛍の光もないんだろうなー。でも大フィルが散々世話になったホールのホントの最後の公演で何もないのはどうかな〜」と思っていたのです。
やがて独唱者に続き、コーラスも退場し、その思いを強くしたところ、大植さんがひょっこりとステージに現れました。(追加の団員も数名、ステージに飛び出してきました)
そして舞台中央に進むと、マイクを取り出しこう切り出したのです。
「こんばんは(拍手)、ベートーベンの第九で締めくくるのがホントーーーーのことですが、今日は色んな意味で特別な日です。
大阪フェスティバルホールは1958年以来、奇跡の名演を送り届けたステージです。数々の素晴らしい演奏家が愛し、皆様に憩いの場を送り続けてきたホールに、大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督である大植英次から心から言わせて頂きます。『本当にありがとうございました』(拍手、そして客席から『ありがとーー!』と声が) そこのお父さんありがとうございます。
開演の年の4月3日だと思います。初めて演奏したのは大阪フィルの前身であります関西交響楽団が非公開で行いました。指揮はご存知朝比奈先生、世界遺産に称えられるお方であります。その時演奏されたのがベートーベンの……日本語では……献堂式序曲とイギリスのエルガーの威風堂々行進曲であります。そこでとりあえずの幕切れ、そして5年後の2013年に改めてオープンするまでの最後の曲としてエルガーをこのフェスティバルホールに捧げたいと思います。(拍手)
2009年は皆様にとって本当に豊かで幸福で、そして平和な年となるようにお祈りの代わりとさせていただきます。本当に今年はありがとうございました。それでは良いお年をお迎えください!」
会場から大きな拍手が起こったのは言うまでもありません。
エルガー…威風堂々行進曲
最初は普通でしたが、やがて会場から曲に合わせて手拍子が起きました。すると大植さんが指揮を止め、くるりとこっちを振り向くと最前列のお客の手を取り、その2人を立ち上がらせました。そして会場に向かって「みんな立って!」とジェスチャーを送ると舞台前列から波の様に聴客全員が立ち上がり、手拍子の大合唱となりました。また天井から「ありがとう50年、そして未来へ」と書かれた看板が下りて来ました。
大きくテンポが変わる所もみんな身をよじってついていき、最後は大いに盛り上がって曲が締めくくられました。
「ブラボー!」の歓声と大きな拍手が湧き起こり、大植さんは度々ステージに呼び戻されます。やがてそれも終わり、オケが解散すると「うん、これで終わりだな」と客席も帰り支度に入ったのですが、妙に一階席の通路が人に埋まっていると感じました。
あれ? と思った瞬間、「ほーたーるの ひーかーーり」と蛍の光が聞こえ始めました。いつの間にか合唱団の方が客席に入っていたのでした。
帰ろうとしていた誰もが足を止め、お客・合唱団みんなが蛍の光を斉唱したのです。この余りに憎い演出に不覚にも胸が熱くなってしまいました。合唱団の方々は歌いながら通路を移動し、曲が終わる頃には出入り口から退場となりましたが、蛍の光を歌い終わると再び会場内からは暖かい拍手が起こりました。
最後の最後にとんだサプライズがありました。
大阪フィルが大阪フィルたる所以は、この芸能は演者とお客が一体となって支えるものだという大阪人の気質によるんだと思います。
2009年から数年は確実に大阪のオーケストラにとっても苦難の時期となるでしょうが、オケはみんなが支えるものだと言う気概を持っていれば、どんな形にせよ、愛すべき大阪のオーケストラは続いていくと思うのですが、どうでしょう?
総じて、今日は来てホントに良かった演奏会でした。
と、言う訳で2008年のクラシックもこうして幕を降ろしました。来年は年末の第九以外にも行きたいと思っているのですが、どうなることでしょう。