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大阪フィルハーモニー交響楽団
「第9シンフォニーの夕べ」 in 2008
(1日目)

日時
2008年12月29日(日)午後7:00開演
場所
大阪フェスティバルホール
演奏
大阪フィルハーモニー交響楽団/大阪フィルハーモニー合唱団
独唱
スザンネ・ベルンハート(S)、スザンネ・シェファー(A)、トマス・クーリー(T)、サイモン・カークブライト(Br)
指揮
大植英次
曲目
ベートーベン…交響曲第9番 ニ長調《合唱》
座席
1階N列R20番

はじめに

 今年もフェスティバルホールにやって来ました。昨日のシンフォニーホールは3年ぶりだったのですが、こちらは辛うじて年1回第九参りを続けられています。
 しかし、そのフェスも今日と明日の公演をもって50年の歴史に一先ず幕を降ろし、ビルごとリニューアルされることとなりました。具体的には2日目に書くとして、さっそく演奏会のレビューをしたいと思います。

 そうそう、今回出演者に一部変更がありました。バリトンのアンテ・イェルクニカさんが体調不良のため、1日目・2日目共にサイモン・カークブライトさんと交代したようです。

ベートーベン…交響曲第9番「合唱」

 全体的に中庸的なテンポで進め、奇をてらうこともなくオーソドックスな曲運びでした。流れが良く、しゃきしゃき曲が進む、全体的な構造の見晴らしが良い演奏でした。ただ旧ブライトコフプ版ではないようで、聴き覚えのない所(例えば第1楽章の再現部少し前でティンパニを叩き出したり)があり、ベーレンライター版かな? と思いました。
 速いテンポが嫌いということではないのですが、第3楽章はもう少しテンポを落として懐深い音楽を目指した方がより良くなったのではないかと思います。

 オケの方はと言いますと、第1楽章冒頭のトレモロから第1主題が出現する所で、音に力を感じませんでした。ステージの上だけで音がまとまってしまい、ステージにまで音を届けていませんでした。シンフォニーホールでしたら、それでもホールの力で客席まで音が響きますが、このホールではそんな訳にも行きません。
 朝比奈さんが健在の頃は、そんなホールをちゃんと鳴らせていたのですから、フェスを鳴らすことは不可能という訳ではでしょう。
 終楽章のコーダになってやっと馬力が出てきたかなと思いましたが、全体的に力感が不足していました。
 またアンサンブルも、ややバタついた印象を受けました。所々おおっと思わせる、良い音色がありましたが、それも一瞬で、全体的な印象を覆すまでには至りませんでした。
 何より一番残念でならなかったのは、朝比奈さん最晩年に指揮者とオーケストラが手を取り合って到達した、あの独特の透明で暖か味のある美しい音色、あの大フィルサウンドが全く消え失せていたことです。
 あの音色は世界中のどのオケにもない、大フィルのみが持つ独自の美しさで、朝比奈さんから大植さんに代わった後は、それに技巧的な裏付けが出来、大輪の花を咲かせていたのですが、この日は(次の日も)それを感じることが出来ませんでした。
 あと第3楽章のホルンソロ、ピストンを極力使わない奏法なのは解ったから、もう少し練習してくれ。この部分でこんなにハラハラする(且つとちる)のは大フィルだけです。

 コーラスも監督が代わってから、非常に技巧的に安定していて、安心して聴いていられます。パワーもあり終楽章ではオケを逆に引っ張っているかのように感じたくらいです。
 ひとつだけ小言を言わせてもらうなら、そつなくこなし過ぎてアマチュアらしい溌剌さを失わないようにして欲しいと思います。

おわりに

 終楽章のコーダでオケが爆発するように最後の和音を鳴らすと(最初からこのテンションでやれよ、と思わくもなかったのですが)、会場から大きな拍手がワッと湧き起こりステージ上に喝采を浴びせていました。
 何度も呼び出される指揮者、独唱陣、合唱指揮者でしたが、やがて散会となりました。
 さて、ここで以前は恒例だった「蛍の光」をどうするのかな? と見ておりましたが、オケに続いてコーラスの退場となり、この日はついにありませんでした。去年と言い今年と言い、大植さんは蛍の光をする気がないんだな……。
(その分、次の日のサプライズが強烈だったのですが)

 総じて、何やら不完全燃焼だった演奏会でした。

 さて、この演奏会に引き続いて2日目の演奏会にも行ってきました。
 本来ならチケット争奪戦に敗れた私は行けないはずだったのですが、さる方のご好意によって聴く機会に恵まれることとなりました。……2日目の最後があんなことになるなんて。


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