金聖響/新世紀浪漫派! と銘打ってやってきたシリーズも今日のブラームスで終わりとなりました。この演奏会も録画されるようで、たくさんのテレビカメラが並べられていました。またテレビ放送とは別にインターネットでの配信も行われるようです。
階段前の立て看板には曲順を変更する告知がされていましたが、どうも1番を先にするようです。演奏効果の上がりやすい1番を先にやってしまうとはなかなかのチャレンジャーです。
さて肝心の演奏内容ですが、両曲とも同じ印象なので、2つまとめて感想を述べたいと思います。
まず速めのテンポでシャキシャキと進んでいき、大変イキのいい演奏でした。旋律に対して細かいニュアンスを徹底して付けていて、繰り返しを全て行っていたのも関わらず、全体的にギュッと締まっていて緩んだ部分がありませんでした。非常に立派だったと思います。
また大きな特徴として曲の最後でディミヌエンドをかけてふわりと終わることが挙げられます。これは前回のシューマンと同じ手で、余韻なしにぶっ放されるブラボー封じには最適ですが、残響の良いシンフォニーホールでやる必要性があるのかは疑問です。(残響のあまりない、フェスとかでやるのなら充分解ります)
音色としては“浪漫”と形容できるような古きウィーンの薫りがするもので、この点は大きく感心しました。
しかしブラームスをやる上で重要な“このメロディーで聴客を殺す”というべき楽章中でもっとも語りたい、頂点に据えたいと感じさせる部分がなく、構成の仕方に物足りなさを感じました。言い換えると元気いっぱいなのは良いが、始終一本調子の音楽で聴客に集中力を喚起させるものがなかったと言えます。
またブラームスで重要な内声部の処理が甘く、ゴチャゴチャと鳴っている印象があり、この事はワンランク上の音楽を目指す上では非常に大切だと思います。そして後半にやった4番での念の入った細かい表情付けに対して、1番での表情付けがやや少なかったのは勉強不足だったからでしょうか? 曲順が変更になった理由もこの辺りにあるのでしょうか。
色々書きましたが、悪くはなかったです。しかし良い所もなかったです。正直退屈でした。
最後の音が消えるかどうかの所でいつもの下品なブラボーが炸裂しましたが、もうあきらめの境地。
拍手自体は盛況でしたが、時間が押していたのか答礼は何やらあっさりとしたものとなりました。
総じて、こじんまりとまとまりすぎな演奏会でした。
帰り際に、前を歩いていたカップルが
「あんなブラボー、真横で聞いたらたまらんなー」
と話していましたが、君達、私はまさにその真横にいたんですよ……。(嗚呼、しかしそれも今日で終わりです!)
さて次回は奈良響によるブルックナーの4番です。ブルックナーに飢えている私としてはぜひとも行きたいコンサートです。