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大阪フィルハーモニー交響楽団
第354回定期演奏会

日時
2002年1月24日(木)午後7:00開演
場所
フェスティバルホール
演奏
大阪フィルハーモニー交響楽団
独奏
神尾真由子(Vn)
指揮
尾高忠明
曲目
1.V・ウィリアムズ…タリスの主題による幻想曲
2.ドヴォルザーク…ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53
3.シベリウス…交響曲第5番 変ホ長調 作品83
座席
Rサイド1階M列3番

笑顔

 朝比奈御大が天国へ旅立たれてほぼ1ヶ月になろうかとしてますが、ロビーには御大の笑顔が花束と共に飾られていて、在りし日の面影を偲んでいました。あれからもうひと月が経ってしまったのですか。
 舞台上ではすでに楽員がウォーミングアップを行っていました。前回の第9の時のような悲壮感はありませんでした。
 またそれとは別にたくさんのマイクが設置されていたことに目が付きましたが、それはFM放送用の簡易なセッティングではなく、サブマイクが多数あるCD録音用の本格的なものでした。EXTONではなさそうなので、コジマ録音なのかな?

V・ウィリアムズ…タリスの主題による幻想曲

 ステージを見渡すと弦楽器奏者のみがならんでいましたが、奥の方には別働隊の弦楽合奏が控えていて、この2つの掛け合いも楽しめるものでした。そうそう、今日のコンマスは岡田さん(ルイージの方)でした。
 しみじみとした感じが出ていた演奏でしたが、全体的にもやっとした印象が強く、もう少しV・ウィリアムズ特有の漂うような詩情が出たらなお良かったと思います。しかし終盤で草原を駆け抜けるような清々しさが一瞬聞けたことが今回の収穫で、この人による他のV・ウィリアムズの曲も聞いてみたいと思いました。

ドヴォルザーク…ヴァイオリン協奏曲

 いったんオケが席替えを行ってから、神尾さんが登場しましたが、バラ色のドレスがステージに良く映え、両肩を出してはいるもの右肩にたすきのようなアクセントのある(表現力ないなぁ)チャーミングなものでした。
 彼女はまだあどけなさが残る15才の女の子ですが、演奏は最初から気合い充分で、その立ち姿からは闘志のようなものが伝わってきました。ただそのためか、始終怒鳴っている一本調子のようなものを感じてしまったこともなきにしもあらず、その点が残念と言えば残念です。(しかしこれくらいの気合いがないと最期まで弾けない曲なんでしょう)
 また音の立ち上がりがしっかりとしたシャープなもので、音色自体がアメリカナイズされとても良く感じました。しかしUSA産のヴァイオリニストは下手するとコクの欠けた演奏家になってしまうので、神尾さんにはさらなる研鑽を願います。
 またこれとは別にオケの方ですが、オーケストラが鳴ってないことが気になりました。でもこれはホールのせいだと思ってこの時は深く思いませんでした。

シベリウス…交響曲第5番

 今日のメインは個人的にこだわりを持って聞いているシベリウスのなかでも特に好きな5番でした。ちなみに35枚を越えるCD批評がここにありますので、興味のある方はこちらもどうぞ
 北欧音楽について、本場北欧のオケはひとつひとつの粒がしっかりとしていて、アクセントの効いた管楽器と切れ味鋭い弦楽器が特徴で、一方イギリスのオケだとまろやかな歌い口の管と厚みのある弦とが一般的な特徴だと言えますが、個人的な好みを言わせてもらえば断然前者で、尾高さんはいったいどんなシベリウスを聞かせてくれるのか大変楽しみにしていました。

 で、まず最初に良かったと言えるのは弦でした。特にpppにおける細かい刻みが普段の大阪フィルとは思えない精緻さがあり大変良かったです。また尾高さんの指揮もまとまりが良く、傍目には難しく感じるこの曲の構成をしっかりと掌握して、それをオケに指示していたと思います。そして尾高さんは曲中かなり大胆なテンポの切り替えや強弱の変化をつけていましたが、それにしっかりと追随した大フィルもよく健闘してたと思います。
 欲目で言わせてもらうと、第1・第3楽章の最期では大阪フィルの馬力から見て、もっと爆発力があっても良かったと言えました。

 一方で目に付いたのは木管です。各フレーズの頭にあるはずのアクセント(または抑揚)に乏しい歌い口はとてもシベリウスの世界とは言えず、譜面上の音符をただなぞっただけの演奏のように感じてしまいました。
 アンサンブルは素晴らしいものでしたが、デリカシーに欠ける木管だったと言わざるを得ません。
 また今日の前半でも感じたことですが、この曲ですらオケが充分に鳴っているとは思えず、ドボルザークもシベリウスもたいした作曲技巧を持ち合わせてないのか?と思うところでした。しかしよく考えてみるとドボやシベのオーケストレーションの腕前から言ってオケが鳴らないはずはなく、そうなってくるとこれは純粋に尾高さんの実力と判断せざるを得ない結論となります。
 ステージ上で見渡せる人数の割りに、縮こまったスケールの貧弱な鳴りっぷりです。

 しっかりとしていて無理がなく破綻のない構成と、非常に整頓された響きはノーブルで、演奏しているひとは心地よいかも知れませんが、聞いているこっちにはなにか物足りない感情を常に抱かせる演奏だったと言えるのではないでしょうか。
 聴客の盛り上がらない拍手が如実にそれを物語っていたと思います。(シベ5が取っつきにくいものだとは言え)
 曲を聞いた満足感から言えば、2000年の奈良交響楽団の方がずっと高く、大フィルの大編成・大迫力によるシベリウスに期待していただけに少し残念な感想となりました。

 総じて、指揮者のカラーが肌に全然合わなかった演奏会でした。

花束

 客席の拍手に何度も答礼に現れる尾高さんでしたが、そのうち大きな花束を持って舞台袖から登場しました。
「……おかしいですよね。普通は花束を貰って帰るのですよね。実はフルートの荒井さんが今日で定期公演は最期なんです。35年でしたっけ? (本人から「34年9ヶ月」と声が上がる)
 ここで荒井さんへ花束が手渡されると大きな拍手が起こりました。
 やがてオケも解散しましたが、荒井さんが舞台袖へ引き上げるときには再び暖かい拍手が起こり、氏も笑みを浮かべ花束を高く掲げてそれに応えていました。

おわりに

 今回の5番でひとまずシベリウスは終わりで、来年はエルガーの1番が予定に上がっています。他のナンバーもぜひ聞きたかったのですが、どうせイギリスものならV・ウィリアムズの交響曲なんか振って欲しかった、と思ったりしました。

 さて次回は、3月10日になりますがブロムシュテットとゲヴァントハウス管弦楽団によるシベ7番&ブル5番となります。
 シベリウスとブルックナーという私が好きな交響曲作曲家が並んだこのコンサート、この時期は仕事の最盛期(別名:死のロード)ですが、ぜひとも行きたいと思います。


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