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第43回大阪国際フェスティバル
内田光子ピアノリサイタル

日時
2001年4月18日(水)午後7:00開演
場所
フェスティバルホール
演奏
内田光子(Pf)
曲目
1.ドビュッシー…映像 第1集
2.シューベルト…楽興の時
3.ショパン…ポロネーズ ハ短調
4.ショパン…ソナタ第3番
座席
1階C列Rサイド5番(S席)

大阪国際フェスティバル

 43回目を迎えた大阪国際フェスティバルですが、今年もおもしろいプログラムが並びました。
 クラシック音楽だけでなく、日本の伝統芸能も取り上げられるのが、このフェスティバルの素晴らしいところで、毎年歌舞伎や能などが上演されています。私も時間が許せばこの歌舞伎や能も行ってみたいのですが、今は行けず仕舞いです。
 能は幾分抽象的な世界ですが、歌舞伎はけっこうエンターテイメントしていて、オペラが好きなら確実に楽しめると思います。一度は歌舞伎も見てみて下さい。

ドビュッシーからショパンまで

会場の雰囲気
 それで、フェスティバル2日目の演目は内田光子さんによるピアノリサイタルでした。このコンサートは大人気だったようで、当日も立見券を求める人達が受付の前で長蛇の列を作っていました。
 また会場内も満員で、ものすごい熱気がありました。
 席につくと前から3列目ということもあって、舞台を見上げる形となりました。そのためピアノの腹がもろに見え、中音部から下の音域では反響板よりピアノの腹から聞こえる割合が多く、これらの領域がくすんで聞こえるように感じました。(高音部は絶品だっただけに惜しい)
 会場の照明が落ちると、満場の拍手に迎えられて内田さんが登場しました。白くゆったりとしたパンツに水色のブラウスの内田さんは会場に向かって身体が二つに折れそうなくらい深々とお辞儀すると、すっとピアノに向かい、すぐさまドビュッシーを弾き始めました。

聴衆について
 聴衆のこの演奏会に掛ける期待は半端ではなく、あのだだっ広いフェスから物音ひとつしませんでした。(携帯電話鳴らす愚か者は2人いたけど)
 ちょっと身を動かした時に鳴る「ギィ」という椅子のきしみさえ気になるほど全員がピアノの音に耳を澄ませていました。(特に前半は凄かった。後半は咳をする人や飴の包み紙を剥く人がいたけど)

演奏について
 内田さんの特長である漂うような音色がとても美しいものでした。しかし先にも書いたように中音域より下が曇りがちでしたので、心から堪能するとまでは行きませんでした。しかし高音域での冴えは涙が出るほど素晴らしく、これだけでも今日は来て良かったと思いました。
 息もつけないほどの緊張感があった「映像」も良かったのですが、今日の白眉はシューベルトの「楽興の時」でした。特に4曲目が凄まじく、中間部での安らぎに満ちた牧歌の歌い回しとその最後に訪れるギョッとするような不気味さとのコンストラクション。そしてコーダで回想される牧歌が既に失われてしまった安らぎ(もしくは幸せ)に対する哀しみとも諦めとも感じられる見事なものでした。
 前半のプログラムではペダルから足が離れ、余韻が完全に消えてからも会場から拍手は起こらず、まさに値千金の沈黙が漂いました。

 後半はポロネーズからそのままソナタへと続けて演奏されましたが、力強さを前面に出した切れの良い演奏でした。
 ただ前半に比べると演奏の冴えがやや薄かったような気がします。
 曲が終わると同時に割れるような拍手が起こり、「ブラボー」の歓声も飛び交いました。

アンコール

モーツァルト…ソナタ ハ長調 K330より第2楽章
シューベルト…即興曲 変ホ長調
バッハ…フランス組曲 ト長調 サラバント
 鳴り止まない拍手に結局3曲応えてくれました。3曲目の時には「もう1曲だけね」というジュスチャーで応えてくれ、会場から笑みがこぼれました。
 モーツァルトではトリルの弾き方に代表される軽やかさが絶品で、内田さんのモーツァルトはやはり別格だと再認識されました。またシューベルトはずっと続いて欲しいと思わせるものでしたし、バッハなど目をつぶっていると音だけが周りの空間を漂っている感じがすごかったです。
 しかしこのアンコール。特に曲目は考えてなかったらしく、ピアノの前で「う〜ん」と首をひねって決めていました。

おわりに

 ちなみにショパンを弾き終わったときのお辞儀の仕方が、前半に比べて浅かったのはやはり本人も会心の出来ではなかったからでしょうか? (アンコールでは深々としたお辞儀に戻っていたのでなおさらそう思う)
 それにしても演奏中の内田さんの顔、すごかったですね。酸欠の鯉みたいに口をパクパクさせたり、声には出さないけれどずっとメロディを口ずさんだり、あの恍惚とした表情は非常にインパクトがありました。

 総じて、一流の音はやっぱり違うと再確認した演奏会でした。

 さて、次は朝比奈隆&大フィルによるブルックナーの5番です。シンフォニーホールでの5番は初めてだそうなので、大いに期待した演奏会です。


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