今年2回目のフェスティバル名曲コンサートですが、チケットがさばけないため来年の開催がピンチなんだそうです。低価格で名曲が聞けるこのコンサートが開かれなくなるのは非常に惜しいことなので、お時間が許される方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか?
今日の指揮者は本名さんです。ですからヴァイオリンが両翼配置になっている位では今さら驚きません。しかしコントラバスがステージ一番奥に陣取っているのにはビックリした。ウィーンフィルかなにかで採用しているのかな? 少なくとも私はこのような配置初めて見ます。
ソリストの谷本だが奏でる音の線が細く、音量が小さいのでフェスのような大ホールでは少々辛いものとなった。
しかし音色自体は美しい音を出そうとする姿勢が感じ取れ、何よりこの曲の構成をしっかりと捉え全曲をすっきりと聞かす所に好感が持てた。これからの人だ。
オケに関しては言うことはないが、後半のブルックナーに合わせた配置なため、ごっそり金管が抜けているメンデルスゾーンではコントラバスだけが離れて奥に引っ込んでいる印象を受け、実際この楽器だけがハーモニーから遊離した音がした。これには少し残念だった。
まず気になる人には気になってしまう版のことだが、普通のノヴァーク版(ノヴァーク4/2またはノヴァーク1878/1880年版)だ。といっても4番に関してはハース版とそんなに違わないので目くじらを立てることはないと思う。
いつもシンフォニーは暗譜でやる本名だが、今日は譜面台を用意しその上になにかメモ用紙のようなものを置いていた。何が書いてあるのだろ? 興味があったが、さすがにフェスの2階席からは見えない。
大阪ではデフォルトである朝比奈隆の「最初のホルンが決まれば後はすんなり行くもんだ」という言葉通り、冒頭のホルンが成功の鍵を握るが、今日の演奏ではビシッと決まって音楽がスムーズに流れていった。
ホルンの成功を受けてオケも第1楽章から気合い充分。舞台奥のコントラバスがしっかりと鳴って音楽を支える。
本名の指揮も音楽をじっくりと進めるもので非常に好感が持てた。ただ残念なことに焦っているかのように時々テンポがツツッと速くなってしまい、宇宙の運行のようなブルックナーの世界に浸ることができなかった。またブルックナー独特の音色(ブルックナーサウンド)を体現できているとは言い難く、オケの方も合わせて練り混みの浅さを感じてしまった。
後の交響曲に比べて底の浅い緩徐楽章がやや退屈。もう少しカンタービレを効かせて伸び伸びとやればいいのにと思ってしまった。またスケルツォ楽章でもなかなかダイナミックさが出ていたが、もっと剛胆にオケを鳴らしてもバチは当たらないと思った。
さて個人的にこれを聞くがために「ロマンティック」を聞く終楽章だが、この楽章ではトランペットとホルンに補強が入り、全曲の頂点にふさわしい盛り上がりを見せた。第1楽章と違ってテンポがフワフワと速くなることもなく、噛みしめるような進め方と相まって、次々と展開されていく音楽に胸躍るものがあった。
一方、終局に向かってじりじりと高まってくるコーダでの盛り上がりが期待ほどではなかった所など、まだ曲の構成に甘いところがあった。
しかし色々文句をタレながらも、最後まで演奏にのめり込ませる手腕は見事だと思うので彼の今後に期待したい。できれば小細工せずに直球で勝負のできる指揮者になって欲しい。
曲が終わると同時に拍手、しかし指揮者は曲が終わってもなかなか指揮棒を降ろしませんでした。本名さんの胸の中ではまだブルックナーの音が鳴っていたのでしょう。
熱心な拍手を送る人と普通の拍手を送る人とに分かれているようでした。私のように終楽章を聞くのが楽しくてしょうがない人間を除くと、なんだか訳の解らない苦痛な60分だったのでしょうか? そう言えば、前半のメンデルスゾーンと違って演奏中に咳をする声がやたら耳に付きました。
また拍手を受ける中で、曲冒頭のホルンソロを受け持った人が起立すると一際大きな拍手が起こりました。
先にも書きましたが、純正のブルックナーを聞いてしまっている耳には決して満足のいくものではなかったですが、今日の演奏も充分楽しいと言えるものでした。本名徹次、先行きの楽しみな指揮者の一人だと言えます。
これでベートーベンが面白かったらいいのになあ。(去年の第9にはガッカリしたよ)
総じて、なんのかんの言って楽しかった演奏会でした。
さて、次回は朝比奈隆の軌跡2000第1弾、そして大フィルとのベートーベンチクルス第2弾としてベートーベンの4番、5番です。
この演奏会に先立って行われた福岡公演の様子も気になりますが、どのような5番を聞かせてくれるのでしょうか? 大変楽しみです。