大阪シンフォニカーのコンサートに行くのは実に1年2ヶ月ぶりです。常々聞きに行きたいとは思っていたのですが、今回やっとその願いが叶いました。さて、今日はどんな演奏になるのでしょうか? とても楽しみです。
また今回この演奏会のチケットを大阪シンフォニカーの運営するWebサイトから入手しました。このサイトがまた素晴らしく、チケット購入以外にもコンサート批評などコンテンツてんこ盛りの内容です。一度行ってみて下さい。
モーツァルト最後のピアノ協奏曲で私のもっとも好きなコンチェルトのひとつです。しかし技巧的にはともかく音楽的に難しく、人生の楽しさや哀しみをすべて包み込んでいながら清純で透明な表現は至難を極めます。
オーケストラを見て気付いたことは弦の配置が古典配置になっていたことです。(すなわち時計回りに左から第1ヴァイオリン、チェロ、ビオラ、第2ヴァイオリン、となっていてチェロの後ろにコントラバスが控えるという配置です)
さて、ソリストの池田洋子さんが紫を基調としたどことなくサリーを彷彿とさせるドレスで登場しました。なんだかかわいいおばさんという感じを受けました。一方コンダクターの本名徹次さんは指揮棒を持たずに登場し、小柄な人ですがエネルギッシュで颯爽としていました。
演奏の方はだいぶ緊張していたせいか曲の出だしでピアノのミスタッチがありましたが、第1主題の提示部が終わる頃にはそういう心配はなくなりました。
なによりオケとピアノとの一体感が大変良く、まさしく協奏と言える演奏でした。特に第1楽章展開部での音楽が転調を繰り返しながら陰影を濃くしていく表現が良かったです。敢えて言うなら両方とも音色にもっと透明感が欲しかったと思いました。
後半は指揮者が指揮棒をもって登場し、曲が始められました。
シンフォニカーの気合いは充分でしたが、第1Vnのアインザッツ(縦のライン)が少し合ってないと思いました。
演奏の方はキビキビと進められ、フレージングが大きく取られたものでした。なんでもベーレンライター版を元にしていたそうですが、聞いた限りは昨日のシュッツの演奏同様よく解りませんでした。ただ古楽器演奏を意識したものであったのは確実のようです。しかし第1楽章など余りテンポを速くすると、音楽の呼吸が切れ切れになり底の浅いものになってしまいます。はっきり言っちゃうと内容がなくて何一つ心に残りませんでした。実際これを書いている今、どんな演奏だったかほとんど思い出せません。
終楽章に入り合唱が歌い出すと愕然としました。まず女声がオーバーバランスな上にぎゃーぎゃー高音で金切り声を上げること、男声がほとんど聞こえないこと、発音がなっていなくてドイツ語に聞こえなかったことが上げられます。特に各パートごとの人数のバランスがなってなく、女声部:男声部=3:1ぐらいだったのはどうにかならなかったのでしょうか?
しかも最後のプレスティッシモでは合唱が1拍ずれてしまったのが、キメ所だっただけに残念です。
演奏が終わると大きな拍手が起こりましたが、もうどうでもよかったです。
熱い拍手に応えてアンコールが掛かりました。
「第9にアンコールというのもおかしな話ですが、蛍の光を演奏したいと思います。それで、できましたら3番を一緒に歌って下さい」
と、本名さんが言うと演奏が始まりました。オーケストラ伴奏で歌われた蛍の光はメイン同様速いテンポで表情豊かに歌われました。
それで3番になると本名さんがくるりと客席を向きタクトを振ってくれました。お客もやや恥ずかしがりながら小声で唱和。
それにしても、本名さんの指揮が解りやすく、棒の動きひとつでクレッシェンドする瞬間や音を切るタイミングが手に取るように伝わり、『指揮者ってすごい』と思ってしまいました。
蛍の光は置いといて、第9についてはほとんど満足できませんでした。オケの力不足もあるでしょうが、指揮者の責任が大だと思います。なにも世の中全員の指揮者がフルトヴェングラーになる必要はないのですが、もうちょっと中味があっても良いと思うのですがどうでしょうか。
しかし、今日はなによりコーラスの出来ががっかりで、どうしようもなかったです。なんとかならなかったのでしょうか?
総じて、聞きに行ってがっかりした演奏会でした。
年末の第9は他にも3つの演奏会に足を運びました。興味がありましたらどうか他のも覗いてみて下さい。