今日はなかなかメインにはなりにくいメンデルスゾーンばかりを3曲並べた演奏会です。前回行った、シューベルトの「未完成」と「グレイト」につづいて、ひとりのロマン派作曲家にスポットを当てた演奏会となりました。
私にとって、メンデルスゾーンには「ぜひとも聴きたい!」と思わせるものがありませんが、知らず知らずにメロディーを口ずさんで、「あれ、これ誰だっけ? アドリブにしては良く出来てるよなー」と思い、後々それがメンデルスゾーンのものだったと気付くパターンが多い作曲家です。(シューマンなんかだと「よし、口ずさむぞ」と思わないと出てこない)
あと、軽やかそうでいて意外とねちっこい旋律線が、ユダヤっぽさを感じさせるのが面白いです。
と、こんな他の作曲家とは違うベクトルの“好き”を持っている作曲家がたっぷりと味わえるとあって、楽しみにしてホールへと向かいました。
今回もステージ上にはテレビカメラが並び、天井からはたくさんのマイクが吊り下げられていました。
今回の模様は9月19日にテレビで、8月下旬〜9月上旬にラジオで、それぞれ放送される予定ですが、それに加えて今回はNTT西日本が運営する「フレッツ・スクウェア」でインターネット中継がされていました。ちなみに今でもアーカイブとして保存されているそうなので、興味のある方はお試しください。
会場は補助席や立ち見や出るほどの満員で、今日は海の日だということもあるのか、中学生の大群が2階席を埋めていました。また盛装で来ている人も多く、特に女性にはド派手なドレスを着たひとがいて、思わず目を奪われました。このシリーズは他の演奏会と比べて、きらびやかな印象があります。
やがて開演時間が訪れ、場内の照明が落とされますと金さんが登場しました。しかし両の手のひらをスリスリとすり合わせるように組み、静かに歩いてくる様子は妙に腰が低く見え、何やら違和感がありました。体調でも悪かったのですか?
最初の「イタリア」ですが、軽々しくなく響きには適度な重さと潤いがあり好ましく思いました。しかしその一方アンサンブルのアインザッツには少々疑問が生じました。特に弦楽器では前のプルトから後ろに下がるにしたがって遅れていき、この編成にしては精度を欠いたものとなりました。(感想はスコットランドとダブるので、この続きは後半のスコットランドにて)
高関さん時代のあの凛としたアンサンブルが、彼の辞任から間もないのにここまで荒くなってしまうことに少し哀しくなってしまいました。
曲が終わるとワッと拍手は沸きましたが、手短に切り上げるとさっと次のコンチェルトの準備へと取り掛かりました。
ソロのアナスタシア・チェボタリョーワがノースリーブのドレスで登場すると会場からは大きな拍手が起きました。
あの甘美なメロディーが鳴り響き渡ると、チェボタリョーワさんの紡ぎ出す音色に耳を奪われました。繊細で艶やか光沢を持った音色はまるで絹のようで、女性らしさを感じさせる柔らかい歌い口が優しい世界を創り出していました。
技巧的に不安になることはまったくなく、音量もオケとまったく引けを取らず、そしてピアニッシモでも決して音が痩せずにしっかりと楽器を鳴らしきるあたり本物の凄さを実感できました。
独奏の方はバッチリでしたが、オケとの打ち合わせが不十分だったのか、旋律の歌わせ方が双方で違っていたのが気になりました。
例えば曲冒頭の有名な旋律も、ソリストが「タータターータ」とテヌート気味でつなげているのに、オケの方は「タンタターーッタ」と音符を確実に区切って演奏しているあたり、もう少し考えて欲しいと思いました。
曲が終わると瞬時に「ブラボーー!」の絶叫が真横から放たれ(5秒前まで寝てたでしょ? アナタ)、場内からも盛大な拍手が送られました。
アンコールの演奏はありませんでしたが、チェボタリョーワさんは何度か答礼に現れてくれました。
20分の休憩後はスコットランドです。
さてイタリアの続きですが、この曲も感想はほぼ同じで、さらに付け加えていくと、どのパートも割とがっしりと鳴らしていて重さを感じさせる響きだったのですが、各声部がゴチャゴチャとしており、聞こえて欲しい旋律が浮かび上がってこないあたりが聴いていてもどかしさを覚えました。
また気合いが入った演奏で、最初のひと鳴りから前半との違いを感じましたが、最初から最後まで全力疾走をしている感じがして、全体的に一本調子な構成がメリハリに欠けていました。
しかしフレージングは非常に細かいところまで気を配った、目の詰んだ表情付けをしており、そのこだわりは充分こちらに伝わってきました。
そしてコンマスの巧みなリードのおかげか彼のアクションが大きくなるに従って、音楽はじわりじわりと盛り上がっていき、終楽章では遅めのテンポを採った堂々としていてスケールの大きい音楽を展開しました。このフィナーレだけは思わず引き込まれてしまう非常に素晴らしい演奏でした。
曲が終わると同時にまたもや「ブラボーーーッ!」の絶叫が真横から飛び(つまんなそうに聴いてたくせに)、ワッと拍手が沸き起こりました。
この拍手も金さんは謙虚な姿勢で受け、オケのメンバーを立たせて労をねぎらいました。
ただ、この時でもう5時を過ぎていたためか、答礼はあっさりしたものとなり、前回のシューベルトの時とは違いアンコールはなしで解散となりました。
次の「新世紀浪漫派!」はシューマンの2番・4番・Pf協とのことで、これも期待できるのではないでしょうか?
しかし、この指揮者は優雅な音楽が似合ってるような気がする……。
総じて、細部にこだわることで暴れたのかー。それでもコーダは非常に良かった演奏会でした。
さて次回は佐渡さんと京都市交響楽団による奈良特別演奏会です。
今年は京都市響をつれての登場です。どんなドボルザークとベートーベンを聴かせてくれるのか楽しみにしています。