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大阪センチュリー交響楽団
第69回定期演奏会

日時
2001年5月7日(月)午後7:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
大阪センチュリー交響楽団
独奏
ゲーリー・カー(Cb)
指揮
十束尚宏
曲目
1.ドヴォルザーク…チェロ協奏曲 ロ短調
2.シベリウス…交響曲第1番 ホ短調
座席
1階Q列20番(A席)

はじめに

 今日の目玉はゲーリー・カー氏によるドヴォルザークのチェロコンです。
 チェロコンといっても今日のはコントラバスによる演奏で、カーさんはその初演者となっています。
 ちなみにカーさんはこの曲を朝比奈隆と録音していまして、以前LPで発売されていました。(演奏:大フィル、場所:ザ・シンフォニーホール、発売:キングレコード K28C285
 噂によると、事実上カー氏の日本さよなら公演だそうですが、それはさておきかなりの期待を持ってコンサートに臨みました。

ドヴォルザーク…チェロ協奏曲

 プログラムにも書いてありましたが、チェロとコントラバスでは調弦が違う(確か3度と4度でしたっけ?)ので、チェロと同じ指使いをするわけにはいきません。唯でさえ難しいコンチェルトがさらに難しくなるわけで、そのへんの名人芸に注目したいところです。
 ただ、ロックのギターでは調弦を普通とは変えて独特のコードを作る人がいますが、カーさんのコントラバスも同様の細工はしていたようです。

 実際演奏を聞いていますと、コントラバスからくる運指量の大きさゆえ音程が不安定になるところがありましたが、ハイポジションをものともしないその弾きっぷりには感嘆の念を覚えました。
 またドヴォルザークの肝といえる歌心いっぱいの演奏が素晴らしく(そのためちょっと崩れたところもありましたが)、とても満足のいく演奏でした。最後のぐっとテンポが落ちてしみじみと歌う所なんか圧巻でしたね。

アンコールフィーバー

 鳴り止まない拍手にコントラバスを持って舞台に登場してくれたカーさん、何をしてくれるのかな? と思っているとコントラバスの奥田さんと目を合わせると指揮台を乗り越えて一番下手に突進しました。
「ダニエル・ヴァン・ゴーンズ スケルルルルルツォ」(ちょいちょいとコントラバスにかかった唾をわざと拭く)
 と曲名を告げると会場から爆笑が起こりました。
 カーさんのAMATIと奥田さんのGiovanni BUSSETTOという2つの名器によるデュオ。
 奥田さんがジャズ風の指弾きで伴奏を付けると、カーさんが伸び伸びとプレイしました。
 カーさんが細かい音符でギコギコと弾くところではそれに合わせて顔をプルプルと振るわせたり、左手を指板からハッと離したりして常に会場から笑いを取ってました。

 まだ止まない拍手に舞台袖からチラリとのぞき込むように登場したカーさんが今度はチェロトップの人と並び、アンコール2曲目が掛かりました。
「ロッシーニ デュエット」
 今度はカーさんの伴奏にチェロがゆったりと歌い出しましたが、カーさんつまんなそうに弾いてます。しかしベースに速いパッセージが現れるとニパッと顔を輝かせて弾いて、またつまんなそうに弾きます。そしてまた速いパッセージでニパッ。お客さん笑う、笑う。
 最後はチェロのパートを取っちゃってユニゾンでおしまい。

 やっぱり止まない拍手にコンマスのセデルケニさんとのデュオ。
「ポール・ネロ ピッチ・キャット」
 ちなみにこの曲名、ピッチカートのカートと猫のキャットをかけています。
 ピッチカートオンリーのこの曲を2人で楽しげに演奏して前半は幕となりました。
 いや〜、カーさんのサービス精神には感心しました。ものすごく楽しかったです。

シベリウス…交響曲第1番

 今年の1月にこの曲を聞いたばかりですが、1シーズンに在阪オケが4団体ともシベリウスの1番を取り上げるなんてそう滅多にあるものでもないので(これっきりでも良いけど)、なるべくすべて行きたいと思っています。
 で、その2回目となる今日の演奏会でしたが、鈍い音色の大フィルよりシャキッとした音色のセンチュリーの方がずっとシベリウスに合っているんじゃないでしょうか。ぜひともセンチュリーにはシベリウスをレパートリーに加えて欲しいと思います。

 で、演奏はというと芳しくはないものでした。シベリウス好きな私でもなにやっているかさっぱり解りませんでした。
 指揮者の十束さんは冒頭から燃え立つような指揮で、激しいアクションとうなり声は気合い十分でした。
 しかし各旋律の整理、デュナーミクのコントロールがメチャクチャで、開始早々前半の楽しい気分が後退していくのを感じました。
 クラリネットの暗いソロが終わって、ヴァイオリンが大きく歌い、金管がそれに乗って初めてオケがフォルテッシモで鳴り渡るところに3連符があるんですが、そこで十束さんが見得を切るようにグワッと指揮棒を高く振り上げちゃったから、ガタガタガタッとオケが崩壊してしまいました。センチュリーにしては珍しい事故でしたが、オケのテンションが一気に萎んでいくのを肌で感じてしまいました。
 これの現れでしょうか、終楽章に弦が延々と8分音符を同じ音で引き続ける所が2カ所あるんですが、この時ビブラートを掛けていたのがコンマスのセデルケニさんとコントラバスの奥田さんだけでした。やる気がないのか、リハーサルで指揮者が何も言わないから手を抜いていたのか、こちらからは分かりませんが、プロらしくない態度ですね。
 まあ、フィナーレだけは全体から見るとちょっとだけマシだったのですが、どうでも良いですね。
 あまり良い印象ではなかった大フィルの演奏と比べても格段に落ちるものでした。

さいごに

 今回の来日がほぼ最後だろうといわれているカーさんですが、あのサービス精神たっぷりの舞台根性をみるととても惜しいことです。
 音楽も結局は、お客を楽しませてナンボ、のはずなので他の人も彼の姿勢を少しは見習って欲しいと思います。

 総じて、前プロだけがめちゃくちゃ楽しかった演奏会でした。

 さて次回は朝比奈&大フィルによるブルックナーサイクル、7番です。
 ちょっと不安に思わなくもないのですが、とりあえず期待しています。


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