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大阪シンフォニカー交響楽団
第74回定期演奏会

日時
2001年5月16日(水)午後7:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
大阪シンフォニカー交響楽団
独奏
谷本華子(Vn)
指揮
トーマス・ザンデルリンク
曲目
1.ブラームス…大学祝典序曲 作品80
2.ブラームス…ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
3.シューマン…交響曲第1番 変ロ長調 「春」
座席
1階N列21番(A席)

はじめに

 エントランスをくぐったときにもらえるチラシの中にシンフォニカーの音楽監督である曽我大介氏と楽団代表の敷島博子女史による対談が載っているパンフがありました。とっても面白いものだったのですが、創立時から非常に世話になったザンデルリンクさんのことを「同じ関係を長く続けていくうちに、どうしてもお互いに『アラ』が見えてしまうものです」と書いてました。これって良いものなんでしょうか? バカなのか正直なのか分かりませんが、今そんなことを書くべきではないと思います。

ブラームス…大学祝典序曲

 で、今日はそのザンデルリンクさんの指揮ですが、最初のひと鳴りからシンフォニカーの音がガラリと変わってしまいました。この人がシンフォニカーを振るとホントプロオケらしい音がする。他の指揮からではこんな音は決して出せない。曽我氏の演奏を聞いたことはまだないですが、このレベルをどう維持してどう発展させるか、その腕前が大変楽しみであります。
 演奏の方は、実に充実した響きが最初から最後まで堪能でき、最後には白熱するような熱狂が込められていて誠に素晴らしい演奏でした。
 演奏が終わるとワッと拍手が起き、今日の演奏会は素晴らしいものになる予感に満ちたものとなりました。「ブラボー」の声が掛かっても不思議ではないくらいでした。

ブラームス…ヴァイオリン協奏曲

 続いて谷本華子さんが登場するとコンチェルトが始められましたが、問答無用で鳴り響くオケに対向するにはやや線が細いような気がしましたが(ブラームスだから感じることで、他のコンチェルトだったらこうは感じなかったでしょう)、繊細な叙情と確かな構成力を持っていて一切の緩みがなく、最初から最後まで聞き入らせる演奏でした。
 終楽章ではほんの少しだけ息切れしているのを感じなくはなかったのですが、第1楽章コーダでの情感は大変素晴らしいものでした。

 曲が終わると盛んな拍手と歓声が飛び交い、谷本さんの演奏を褒め称えるものとなりました。
 爆発系ではないのでインパクトは薄いですが、これからが大変楽しみなソリストであります。

シューマン…交響曲第1番「春」

 休憩後は、今日のメインとなる「春」ですが、今日一発目の序曲と比べてやや硬さを感じるスタートとなりました。
 リハーサルがしっかり取れなかったのか? と勘ぐりましたが、オーケストレーションの差かもしれません。
 それでも第1楽章の主題が飛び出してくる頃には非常にウキウキとした気分になり、先行きがとても楽しくなるものでした。特に再現部となり序奏が回帰してくる瞬間なんか身震いするほど素晴らしく、この先いったいどうなるんだろうか? と思ったくらいでした。
 まあ実際は若干トーンダウンをしてしまいましたが、堅実で手堅く曲をまとめ、いたずらに煽ることもなく演奏は進行していきました。
 指揮者によっては終楽章でやたら煽り立て、かえって空々しくなってしまうことがありますが、ザンデルリンクさんは実に落ち着いたテンポでマッタリと進むことでなかなか良い気分で曲に浸ることが出来ました。
 演奏が終わると大きな拍手が会場を包み、暖かい雰囲気で演奏会の幕が閉じられました。
 第1楽章の再現部終わりまでは、滅多に聞けない名演だったと思います。

おわりに

 本名さんや牧村さん、コバケンが振ってもシンフォニカーの音が変わることはありませんでしたが、ザンデルリンクさんが振ったときだけは確実にシンフォニカーは変わります。
 さて音楽監督が変わって、これからどんな音になっていくのでしょうか? 「日本一若い」音楽監督のこれからに注目していきたいと思います。

 総じて、予想以上に満足できた演奏会でした。

 余談ですが最近このオケ、大阪シンフォニカー交響楽団と改称しましたが、「シンフォニカー」って「交響楽団」という意味ではなかったんじゃないでしょうか?

 さて次回は関西フィルによる吉松隆の交響曲第4番初演です。
 第3番で今までとは違うパターンで攻めてきた吉松氏ですが、今回はどんな曲を聞かせてくれるのでしょうか? 非常に楽しみにしています。


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