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大阪フィルハーモニー交響楽団
第332回定期演奏会

日時
1999年10月8日(金)午後7:00開演
場所
フェスティバルホール
演奏
大阪フィルハーモニー交響楽団
独唱
永井和子
合唱
京都バッハ合唱団女声部&大阪すみよし少年少女合唱団
指揮
佐渡裕
曲目
マーラー…交響曲第3番 ニ短調
座席
Rサイド1階G列2番(A席)

狼少年が私に語ること

 今日も適当なことを言って職場をふけました。残業よりもマーラーが大事なのは言うまでもありません。そそくさとフェスティバルホールに足を運びました。(でも、仕事を家に持って帰る羽目になっちゃいました。しくしく)
 さて、今日のマーラー第3番ですが、この曲は意外なことに演奏時間に反して簡単な部類に入ります。(第1楽章は除く) それぞれの楽章が完結した世界を持っていて、またそれが並列で並べられているため、ひとつひとつの楽章をこなしていけば割と成功しやすいのです。特に終楽章が素晴らしく、盛り上げるタイミングがはっきりとしているため、多少の失敗も最後で帳消しにできるからです。
 エサ=ペッカ・サロネンがマイケル・ティルソン・トーマスの代役でこの曲を振って大成功を収め、一気にスターダムにのし上がりましたが、これは3番だからできたことで、2番や6番ではとても無理だったと思います。
 今日の指揮者、佐渡裕は30代半ばでこの曲に挑戦しますが、どんな3番になるのでしょうか? 私はどうしてもバーンスタインの影を彼の後ろに見てします。

マーラー…交響曲第3番 ニ短調

 思い切りよく始められたホルン8本のユニゾンが気持ちよかった。「夏の交響曲」と言うイメージを彷彿とさせる音楽づくりです。
 主題提示部では緊張感溢れる静寂が会場を占めて、空調の音が気になるくらいでした。
 第2展開部に入ると、それまできっちりと指揮棒を振っていた指揮者が身振り手振りで音楽を表現し始めました。第2展開部から複数のマーチが同時に鳴り響く展開になるので、棒できっちり拍を刻むだろうと思っていましたが、快く予想を裏切ってくれました。ここからが佐渡の本領発揮で、音楽が生き生きと動き始めました。素晴らしい盛り上がりを見せて第3展開部に移ると、ここでは楽器間でのメロディの受け渡しを丁寧に行っていて、旋律の移ろいがとてもよく解りました。
 第3展開部終盤での荒れ狂うような表現が弱く感じましたが、畳みかけるように再現部からコーダに突入すると、目が眩むような高揚感をもって第1楽章が終わりました。

 第1楽章の後、少し長いインターバルを取りましたが、指揮者はそのままステージに残っていました。そして独唱が入場してくると第2楽章が始まりました。
 この楽章では木管の出来が素晴らしく、とてもチャーミングに聞くことが出来ました。
 第3楽章の目玉と言うべき、舞台裏のポストホルンですが、生で聞くとまさに夢まぼろしのように響き、大変しみじみと心に滲みました。
 第4楽章でのアルト独唱は歌詞の中身をよく吟味した歌い方で、大変聞かすものとなっていました。ただ声質が透明な響きを持った人だったため、曲にマッチしているかと言われれば、もう少し深い声の方が良かったと思います。ただホールの特性を考えた、子音を強調させる歌い方は素晴らしいと感じました。
 続く第5楽章では女声合唱と児童合唱がすっと立ち上がり歌い始めましたが、独唱に比べて子音がはっきりと伝わってこないので、旋律線のやや甘いものとなりました。ここで気付いたのは児童合唱が女の子だらけで男の子がほとんどいなかったことです。最近男の子がコーラス隊に入ることは少ないのでしょうか。

 アタッカで続けられたフィナーレは合唱と独唱も立ち続け、独唱だけが第1主題が提示し終わる頃に静かに座りましたが、合唱は最後まで立ち続けました。そのフィナーレですが最後の高揚感が素晴らしく第2部になってから元気を感じられなかったオケが、力を振り絞って演奏していました。
 私は今まで木管のベルアップにまったく有効性を感じなかったのですが、今日の演奏で初めてその意味が解りました。と、いうのも金管楽器がffで鳴り響いているところでオーボエがベルアップして吹くと、普通は大音響のなか埋没してしまうその旋律線がくっきりと浮かび上がってきたのです。なるほど、マーラーはそう言う狙いがあったのか。
 2人のティンパニが音をピッタリと合わせるため、指揮者とお互いをちらちら見合って叩いてました。まあ佐渡さんの指揮が拍子の解りにくい指揮だからそうなったのでしょうが、見てる方はなんとなくスリリングで面白かったです。
 ただ金管が吹き続けだったせいか、リートが疲れたらしく音がフラフラしていました。特にクライマックスで1拍早く吹いちゃった人がいたのは残念でした。

 曲が終わると大きな拍手が起こりました。(拍手しない人もいました) 佐渡さんも大分疲れた顔をしていました。
 拍手に応えるため、ポストホルンを吹いた人も出てきましたが、あの楽器ってトランペットの管が巻いている部分を大きくしたような形をしているんですね。
 あと大阪すみよし少年少女合唱団の先生がいつものように明るく登場してきたのは微笑ましかったです。

おわりに

 全体的に言えることは、ホールの関係かアタックが弱く音の粒がクリアーに聞こえなかったこと、またテンポが若干速くて先走って進む印象を受けたこと、が挙げられます。しかし佐渡さんらしい、音楽に命があること、曲の最後に素晴らしい高揚感を描くことが味わえたので、指揮者の今後に期待したいと思います。

 総じて、ややガッカリした演奏会でした。

 佐渡さんには、カスみたいな上っ面の効果しか表現できないマ(以下3名ほどの実名が挙げられていたが、自己検閲により削除)などのようにならず、魂の奥底から湧き出る音楽を表現できる指揮者になって欲しいと願います。

 さて、明後日はヴァンスカとフィンランド・ラハティ交響楽団によるシベリウスの5番&2番です。彼らのCDは持っていますが、実演ではどんなシベリウスを聞かせてくれるのでしょうか? 楽しみです。


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