どうもご閲覧ありがとうございます。このページをアップした時、爆発的にアクセスが増えたのにはビックリいたしました。
やれ「特に何もない」とか「低音部の充実を図るべき」とか「子音が不明瞭」とか当事者の苦労を省みず好き放題言って申し訳ありません。いけないとは思いつつ音楽を愛してるが故にどうしても口が酸っぱくなってしまうのです。ご了承下さい。(文章が稚拙だからと言うのもあるけど……)
機会があればまた行ってみたいのでよろしくお願いします。
それでは本編始まります!
2年半携わった現場を金曜日に引き払いました。年が明ければ新しい現場に赴任します。けど、まだどこの現場かはっきり教えてくれません。(どないなっとんじゃウチの会社は……)
ところで3時頃私は心斎橋にいました。タワーレコードです。時間に余裕があったので寄り道をしたんです。めぼしいCDをかごに入れてレジに持っていくと「合計はちまんろくせん円です」とのこと。……俺はバカだ、ウルトラバカだ。これから年末どうやって過ごすんだよ……。確かにベートーベンの全集5つにニールセンの全集2つにブラームスとヴォーン・ウィリアムズの全集買ったよ、でも8万超えるか? ……超えるか。未聴のCD100枚以上溜まってるぞ。
大阪城公園に降り立つと見渡す限り女の子だらけ。ひ、ひょっとしてみんな私に会いに来てくれたの? 「サンキュー、ハニー達! 愛してるよーっ」 ……あれ? どうしてみんな白い目で睨むの?
横にいたダフ屋のオッサンに聞くと今日大阪城ホールでV6のコンサートがあるそうです。なるほどそれでこんなに女の子だらけなのか。縁日まで立ってるぞ。
いずみホールは大阪城ホールと川を挟んで反対側のホテルニューオオタニの敷地にありました。
もうすっかり日は落ちていて、第2寝屋川を見ると水面が夜の闇と街の光を写し込んでゆらゆらと波打ってました。水上バスの低い船体が静かに揺れていました。ホテルとホールの橙色の照明がキャンドルライトを思わせて幻想的でした。
ホールに入ると、こじんまりとしているがとてもきれいな印象を受けた。クロークに先ほどのCDの袋とコートを預けた。手のひらには袋の跡がくっきりと付いていた。痛くてなかなか手のひらが開かない。
会場内に足を踏み込むとまるでウィーンの楽友協会ホールのようなインテリアに目を奪われる。でっかい8つのシャンデリアが天井からコウモリのようにぶら下がってる。これがすごく目立つ。また全体的にシックな木目調だ。
座席に座ると前から16番目のど真ん中。また後ろから8番目。このホールは座席のほとんどが1階席で、2階のバルコニー席が左右に少し付いてるだけだ。またH列から客席に勾配が付けられ、どの席からもステージがよく見えるようになっている。私の席だとちょうど雛壇上の合唱団と同じ目の高さになる。今回の席は文句無し。
ところでバルコニー席の手摺りがちょっと低すぎる。あれだとその内誰かが落っこちるぞ。
席につくと恒例の「へーくしょい!」をやってみた。残響は芳醇で長いが減衰がとても速く、まったくしつこくない。またステージに向かって残響が消えたので音の抜けが良いとも言える。
そして椅子の出来がこれまた良く。きちんと腰骨をサポートしてお尻の位置がすっと決まり、正しい姿勢で座ることが出来る。良い椅子だ。贅沢を言うとステージを見ると首の角度が今一つだったので、背もたれの角度をほんのちょっと立てて欲しい。
客層は中年層が多く、おばちゃん連中が多かった。後ろでしゃべっている声に耳を傾けると、ママさんコーラスをやってるみたいで大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団は憧れの合唱団のようだった。またオーケストラの音を生で聞くのは初めてだとも言っていた。
しかし客はおばちゃんだけではなくけっこう若い人もいて、最前列では女子高生が数人陣取っていた。(制服でしたぜ、旦那)
客席はほぼ満席でした。
ひとつ気になったことは空調のことで、良く効いていたんだけど湿度の調整まではやってないらしく、室温が上昇するに連れて唯でさえ低い湿度がどんどん下がってしまって途中喉がイガイガした。実際この日は咳をする人が続出して、みんな大変そうでした。合唱団の人はもっと大変だったろうな。
さて、オケの準備ができた所で指揮者登場。異常に背筋を伸ばしてしゃきしゃきと壇上へ。
この曲はクレンペラーのCDでしか聞いたことがない。作曲時期はベートーベンの後期に入る曲だが、まだ彼はスランプのトンネルの中にあって、祝典劇《シュテファン王》に付けられた10曲のうちベートーベンらしい曲はこの序曲ぐらいだそうだ。
演奏について取り立てて言うところはないが、木管群(特にフルート)にもうちょっとデリカシーのある歌い廻しをして欲しかった。またホルンには大いに不満が残った。タンキング(金管でもこういう言い方します?)の訓練をするように。
以前ニフティーのクラシックフォーラムでこの団体が演奏した2年前の「ミサ・ソレムニス」が絶賛されており、「それなら」と今回チケットを買い求めた経緯がある。そのため今日の演奏会は大変期待しており、この日のためにCDを聞き込んで予習もしたつもりだ。
はてさてどんな演奏を聞かせてくれるのか非常に楽しみだ。
序曲の後、合唱団と独唱の人が入場。女声陣が青いドレスを着ているのが目に映える。玉虫色と言うのか、いや昆虫のハンミョウの背中にそっくりな青くてキラキラした色だ。
また驚いたことにアルトの女の人に混じって男の人が2人いた。慌ててプログラムを見ると「カウンターテノール」とあった。ほー、実際に生で耳にするのは初めてだ。
さて、ミサ・ソレムニスだがこの曲をどのように捉えるかで解釈が変わって来る。一つ目はこれが平和と平穏を願う頌歌だという捉え方。二つ目はあくまでこれはミサ曲で、この曲にミサ曲の範疇を飛び越えてしまう所があってもミサ曲の持つ形式は崩さないという捉え方。前者で思いつくのはバーンスタインや朝比奈の演奏で、今回の当間の解釈は後者だと言える。
これを頭に入れておかないと肩すかしを喰らってしまう。
キリエ〜グローリア
オルガンも加えた短い前奏に続いて合唱がKyrie(哀れみ給え)と歌う。人数の関係か女声がかなり前に出ている。(ソプラノ23人、アルト18人+2人、テノール10人、バス10人) 男声は人数が少ない分頑張らなくてはならない。
またこれと同じ事がオケにも言えた。弦楽器が第1ヴァイオリン6、第2ヴァイオリン5、ヴィオラ4、チェロ3、コントラバス2という編成だったが、できたら8(10),8,6,4,3。無理だったらいっそのこと4,4,4,4,2として低音部の充実を図るべきだったと思う。
音楽的にはグローリアの最後が盛り上がった程度で特に何もない。
クレド〜サンクトゥス〜アニュス・デイ
休憩を挟んで後半戦。
クルドが始まるとコーラスもオケも見違えるくらい音色が輝きだした。不思議。特に前半元気が感じられなかったオケが比較的良く楽器を鳴らし、ffでコーラスの声が聞こえなくなる程の充実さを見せていた。返す返す低弦の数が少ないのが惜しまれる。
クレド後半のクライマックス。ちょうど独唱が入る直前の音量的にもっとも盛り上がるところ、全員が乗り乗りで信仰宣言を歌う。
見ると、メンバーが手にしている楽譜が同じ振幅でヒラヒラ上下に揺れるのが面白かった。60余の白い蝶。
サンクトゥスを経てアニュス・デイに至ると全員で深遠なクライマックスを描く。ここにいたってこの曲の持つ魂の平穏を願う精神性がひたひたと迫ってくる。pacem(平和を!)と繰り返されるこの言葉が心に滲みいってくる。
このアニュス・デイが最も素晴らしかった。今日はこの楽章を聞けただけでも収穫だった。
終わると会場中から暖かい拍手。指揮者と独唱者達が何度もステージに呼び出されて演奏会の幕は閉じた。
観客も今日の曲目に慣れていない人が多く、どこで拍手をするのかピンと来ない人が多いようだった。
さすが文化庁芸術祭優秀賞を獲るだけのことがある。
縦のラインがピッタリ合っていて、またメンバーそれぞれが声のコントロールを良く利かしているので、実に心地よいハーモニーを聞かせてくれる。
そして曖昧に歌った所が皆無。これには驚きで、この曲を充分に歌い込んでいるのがとても良く分かった。
唯ちょっとつっこましてもらうと、pとsの子音が不明瞭で歌詞が良く聞き取れない箇所があった。これはフォルテで歌う所でさらに顕著になっていた。またクッ、シュッといった息だけの音ももっと観客に聞こえるようにしなくてはならないと思う。そしてt行が日本語ぽく聞こえたので、もっとラテン語らしく歌って欲しかった。
あと、男声コーラスの人数が少ないのは台所事情でどうにもならなかったのですか? テノール・バス共もう6人いたら腰の据わったハーモニーになると思うんですが……。
独唱陣にはあまり意見はありませんが、バスの人が甘い声でなかなか好感を持った。
またアルトの人が正直上手だとは思われなかった(声がハーモニーに埋没していた)が、メゾソプラノぐらいの音域で仰天するほどの美声が聞けた。きらりと光るものが見えたのでこれからも頑張って欲しいと思った。
ちなみに大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団の母団体、大阪コレギウム・ムジクムがWebページを開設しているので興味が湧いた人は一度訪問してはどうですか? そこから手作りの臭いがプンプンする自主制作のカセットテープが注文できますよ。
この日から5日間で4つのコンサートに行くハードスケジュールが始まりました。(券を取ったのは自分ですが……) 大変ですが「コンサート道中膝栗毛」も頑張って早くアップしたいと思います。
コンサートの帰り、ロビーで自主制作のカセットテープ(CDもあったけどほとんどはテープ)を販売していたのでベートーベンの「交響曲第8、9番」、2年前話題になった「ミサ・ソレムニス」、そしてペルトの「カントゥス/ベルリン・ミサ他」を買いました。ちょっと珍しいのが混じってますが、ペルトの「カントゥス 〜B.ブリテンへの追悼〜」は私が現代の音楽(現代音楽にあらず)も聴けるように導いてくれた曲で、大好きなんです。
総じて、過大な期待を抱きすぎていた演奏会でした。
ホールを出て、すっかり人通りが少なくなった(V6のコンサートは先に終わってたようだ)道を歩いていると、大阪城がライトアップされてその緑青色の体躯を公園の木々の上から覗かせていた。街の闇に浮かぶ屋形船のようだと思った。