今年も3日公演の千秋楽に行って来ました。すっかり一年の締めくくりとしては大阪フィルよりこっちの演奏会が定着してしまいました。
会場は補助席も出る満員ぶりでした。開演時間が来ると合唱団はオケに先んじて入場してきましたが、独唱は第2楽章の後に入場し、コーラスの前に座る形となりました。
黒い詰め襟で登場した佐渡さんがタクトを振り下ろすと弦のトレモロから曲が始められました。
第1主題が全貌を表す所は非常に遅いテンポで重く、迫力に満ちたものでしたが、主題が確定するとやや遅めのテンポで進んでいきました。しかしチェロとコントラバスの鳴りが良く、ドンと腰の据わった音は大変充実していて、規模の大きな大フィルにも負けないパワーがありました。
曲へのアプローチ自体は非常にオーソドックスなもので、ティンパニは32分音符刻みではなくトレモロでしたし、第2楽章の繰り返しは最初スケルツォ前半のみリピートしてダ・カーポ後はリピートなしでした。また全体的に木管がはっきりと聞こえたのは、中規模編成のオケが持つ特徴を生かしたものでしたが、細かいニュアンスに気を配っていて安心して聴けるアンサンブルでした。
佐渡さんの指揮ぶりを見てるとやや疲れが見えるもので、前半2楽章は少々セーブ気味でしたが、第3楽章から徐々にアクションも大きくなり第4楽章で全開の指揮ぶりとなっていました。
第3楽章はこれもまた遅いテンポでじっくりと歌い込んでいきました。またクライマックスでのファンファーレもスパッと音を切るのがバッチリ決まり、その後の悲劇的な響きも心に沁みるものでした。
終楽章での合唱団ですが、人数が少ないのにも関わらず、かなりの声量でシンフォニーホールを満たしておりました。女声と男声の比率がほぼ五分だったため、厚みのあるハーモニーでしたが、ソプラノが高音で喉を絞って歌ってしまう箇所があり、それが残念に思いました。また小節の最初にアクセントを置かないので、旋律がのっぺりと聞こえてしまい、人数の割りには旋律がはっきりとしませんでした。その欠点はフーガの部分で強く出てしまい、対位法をきちんと聴くことができませんでした。(これは佐渡さんが主旋律を強調するアプローチをしていたせいもあります)
終盤にかけて熱く盛り上がっていく構成力はやはり見事で、コーダでは晴々とした充実感でいっぱいになりました。
曲が終わると同時に弾けるような拍手と歓声が湧き起こり、佐渡さんとソリスト達を何度も呼び出すものとなりました。最後に佐渡さんが「バイバーイ」と客席に手を振ると2004年の演奏会の幕も降ろされました。
なんか辛口なことをグダグダと書いてしまいましたが、このコンビの第九はやはり格別で、聴き終わったあと非常に充実して家路につくことが出来ました。
こういう演奏を聴くことが出来たなら、やっぱり「来年も来よう」と思うわけで、こんなことの積み重ねがひとつの定番を形作っていくんだなと思いました。
総じて、一年の最後に相応しい充実した演奏会でした。
さて次回は……、ありません。なんと次に行くべきコンサートのチケットがまだありません。こんなこと演奏会に足を運びだして7年目となりますが、初めての経験です。
けれどコンサート通いを止めるつもりはまったくありませんので、券が取れ次第改めてご報告させてもらいます。