ここでは、ブルックナーの交響曲以外の曲と企画物のレコードを取り上げます。
1983.9.16 L | 大阪フィル | 東京カテドラル教会・聖マリア大聖堂 | ★★★ |
LP | Victor | VIC-4160/1 | |
CD | Victor | VICC-60323 | |
演奏について
この曲は交響曲第3番の第2楽章として書かれたもので、第1稿と第2稿の間に成立したとされる。これはノヴァーク版第1稿の補遺として出版されている。 朝比奈としては唯一の演奏で、世界でも2番目の演奏となった。ちなみにこの演奏のため取り寄せたパート譜には、初演者であるクラウディオ・アバドによる書き込みがあったが、「弾きやすいようにスラーなどが入っていたが、ブルックナーの魅力を大きく損なっている」と全部消しゴムで消した、と言うエピソードが残っている。 この楽章のみの演奏なためか、オケのノリが良くなく、やっと弾いているような聴いていて心細くなるアンサンブルと、所々焦って曲を進めるような性急さが覗くため、やや面白さに欠けるが、ゆったりとしたテンポで低音からどっしりと腰の据わった音楽を展開する。 特別大きく盛り上がることもなく、「交響曲のアダージョ楽章だけを抜き出しました」と言うアプローチなため、どちらかと言うと資料的価値の方が高いと言える。 |
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録音について
左右の広がりはほとんどないが、教会における長大な残響がたっぷりと入っており非常に気持ちよい。低音が空間に融けてしまい、ややボケ気味だが、音自体は大変自然で、細かい音まで良く拾っており、臨場感が大変良好である。 カテドラル教会で収録したものの中で一番の好録音だと言える。 |
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同時収録
・ブルックナー…交響曲第3番(LP) ・シベリウス…交響曲第2番(CD) |
1980.6.4 L | 新日本フィル | 東京カテドラル教会・聖マリア大聖堂 | ★★★★ |
LP | Victor | SJX1151-9 | 限定盤 |
演奏について
この曲は生涯に3回だけ取り上げている。これはその1回目となる演奏。 冒頭から気合いの入ったもので、序奏から主部への入り方など非常に力の入ったものとなっている。 アンサンブルに不安となってしまう箇所もあるが、オケの無骨な鳴らし方が朝比奈らしく多変心地よい。コーダなど非常に豪快で、大変愉しいものとなっている。 |
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録音について
オンマイクだが、音の広がりは良くない。また音の粒がきめ細かく、弦などは細かい表情を良く拾っている。 |
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同時収録
・第4番/日本フィル ・第5番/東京都交響楽団 ・第7番/日本フィル ・第8番/大阪フィル ・第9番/新日本フィル このLPセットはシリアル番号が付いた予約限定盤で、5番と9番のみがビクターの全集に再録されCD化されている。 |
1980.7.14 L | 大阪フィル | 大阪フェスティバルホール | ★★★★ |
LP | 日本ブルックナー協会(Victor) | PRC30233/4 | 自主制作 |
演奏について
今は亡き日本ブルックナー協会が自主制作したレコードで、序曲については2度目の演奏となる。 冒頭から早めのテンポを保って、グイグイと力強く曲を進めていく。曲が始まってからクライマックスまで一気に登りつめて行くような演奏で、最初から最後まで聴き手を集中させてしまうものとなっている。 |
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録音について
音場は左右に良く広がっていて、楽器の分離は割りと良く解る方だが、全体的に平坦な印象を与える。 |
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同時収録
・ブルックナー…ミサ曲第3番 |
1989.2.17 L | 大阪フィル | 大阪フェスティバルホール | ★★★ |
CD | TAKASHI ASAHINA SOCIATY | TAS-002 | 自主制作 |
演奏について
朝比奈にとって3度目の演奏で、これが最後となった。 静と動のメリハリがはっきりと付いている演奏で、すっきりとしたテンポを採りながら、じわじわとテンションを上げていき、最後はきっちりと大きなスケールの響きで曲をまとめ上げているため、大変聴き応えがある。 |
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録音について
自然な音の広がりや奥行きを感じさせる素直な録音。楽器の位置が把握出来る程度の分離は出来ているが、ダイナミックレンジは狭く、最強音での迫力はいまひとつとなっている。 |
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同時収録
・ブルックナー…交響曲第0番 |
1991.3.16 L | 東京交響楽団&同コーラス他 | オーチャードホール | ★★★★ |
CD | Pony Canyon | PCCL-00126 | |
CD | Pony Canyon | PCCL-00520 | HDCD |
演奏について
この曲は生涯に6回取り上げたが、この演奏が最後のもので唯一の録音。 交響曲と同じアプローチで低音からどっしりと積み上げられた重量感溢れるサウンドとテンポの変化を極力抑えた厳粛なフォルムが素晴らしい。加えて声楽が入っているためか、その表現は激しく劇的だ。しかしそれはオペラ的なうねりがあるものではなく、理知的に整えられた端正なものとなっている。また全5曲を1つの楽章のようにまとめ上げる構成力は大変見事だと言える。 一方、コーラスは大変熱のこもった歌唱を聴かせてくれるが、どうも日本語っぽく聞こえてしまい、ラテン語には聞こえないのが残念だ。また女声と男声のバランスも良くない。 《独唱》 古嵜靖子(S)/郡愛子(A)/川上洋司(T)/多田羅迪夫(Bs) |
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録音について
ノーマルの方は合唱がオケより前に出てしまっている。音同志が溶け合ってしまって分離状況は余り良くない。またコーラスがピークでピリついているのもいただけない。ただし独唱とヴァイオリンソロはしっかりと録れている。 HDCDの方は声楽が奥に座り、オケがしっかりと前へ出るようになる。また音が飽和している感じもなくなり、分離もしっかりしたものとなっている。またピークで音割れすることもなく、ノーマルと比べると非常に優れたリマスターとなっている。 |
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同時収録
・ブルックナー…交響曲第9番 |
1980.7.14 L | 大阪フィル&同コーラス | 大阪フェスティバルホール | ★★★ |
LP | 日本ブルックナー協会(Victor) | PRC30233/4 | 自主制作 |
演奏について
今は亡き日本ブルックナー協会が自主制作したレコード。朝比奈にとっては初めてとなるミサ曲第3番の演奏。 オケが分厚く鳴り、男性的な響きを生み出している。曲の前半は比較的淡々と曲が進むが、後半になると音楽が大きな膨らみ、合唱と独唱が熱のこもった歌唱を聴かせる。 ただ演奏の方は終局で再び冒頭の淡々とした雰囲気を取り戻し静かに終わるため、カタルシスを得るまでは至らない。 合唱については冒頭のピッチに不安定な所があり、フォルテで日本語的な発音になってしまっている。 《独唱》 樋元栄(S)/藤川賀代子(A)/林誠(T)/三室堯(Br) |
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録音について
音場は左右に良く広がっているが、独唱が大きく前に出て、全体的に平坦な印象を与える。楽器の分離は割りと良く解るほうだが、合唱の分離はそれほど良くはない。 |
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同時収録
・ブルックナー…序曲ト短調 |
1983.9.16 L | 大阪フィル | 東京カテドラル教会・聖マリア大聖堂 | ★★★ |
LP | Victor | SJX9578 | |
CD | Victor | VCD1195 | |
演奏について
ブルックナーのミサ曲はたくさんあるが、朝比奈が取り上げたものはこの3番と呼ばれるヘ短調のものだけで、全部で2回演奏した。 冒頭の沈み込むような雰囲気からグッとこちらの気を惹かせる。合唱は日本語っぽいラテン語なのが残念だが、バランスの良いわりと透明感のあるハーモニーを聴かせる。 残響が長いためかなかなか厳かな雰囲気を醸し出している。特に4曲目のサンクストゥスから5曲目のベネディクトゥスにかけては音楽が大きく膨らんで行き、優しくそれでいて力強く包み込む感じがする非常に素晴らしいものとなっている。 終曲となる6曲目のアニュス・デイがやや哀愁を滲ませて終わるのが珍しい。 《独唱》 中沢桂(S)/伊原直子(A)/林誠(T)/勝部太(Bs) |
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録音について
所有しているLPの状態がかなり悪いので、細かい所までは言えないが、オケに比べて合唱がちゃんと奥にいることが判り、金管も奥まっているのが判る。オケは左右に良く広がっているが全体に音の粒が丸まっている気がする。 |
1987.11.3 L | 大阪フィル/関西6大学合同合唱 | 大阪フェスティバルホール | − |
カセット | レーベルなし | 番号なし | 自主制作 |
演奏について
関西6大学の合唱団(同志社グリークラブ、関西大学グリークラブ、大阪大学男声コーラス、立命館大学メンネルコール、甲南大学グリークラブ、関西学院大学グリークラブ)による合同演奏。日本初演。 「関西6大学合唱演奏会−2」に「第14回関西六大学合唱演奏会」の1曲として収められている。 未聴のため批評できず。 |
1974.11.1 L | 大阪市音楽団 | 大阪フェスティバルホール | ★★★ |
LP | 日本ワールド・レコード | WL-8319 | 自主制作 |
CD | EXTON | OVCL-00145 | HDCD |
演奏について
長年ブルックナーの作曲らしいと言われていたが、近年の研究でケラーと言う人の作曲だと判明した。そのため大阪市音楽団自主制作のLPではブルックナー作曲となっているが、EXTONから出たCDではケラー作曲となっている。ただ未だにブルックナーの作曲目録には残っているので、こちらにも記載した。ちなみにこの演奏はライツェンの編曲版で、原曲より編成が大きくなっているらしい。 LPはブラスバンドである大阪市音楽団が創立60周年を記念して発売したもので、CDは朝比奈の死後EXTONが大阪市音楽団との演奏をまとめて発売したものとなっている。 曲自体は余りに明るく屈託のない曲想で、一聴しただけでブルックナーではないことが判る楽しい行進曲だ。 演奏の方は行進曲らしくリズミックでキリリと締まった曲の造型をしている。しかし低音からずっしりと積み上げていくサウンドはブラスバンドらしからぬ重量感を持っている。 |
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録音について
LPの方はシンバルの音が強く入っているが、低音から切れよく入っており、金管のアタックなど生々しい。 CDの方は少し残響音が付け加えられているが、音場が良く広がり、大太鼓がズンと響く中音域〜低音域の密度が濃いバランスとなっている。LPでは入っていた拍手がこちらではカットされている。 |
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同時収録
LP ・ジェイガー…吹奏楽のための交響曲(第1番) ・パレス…序曲「リシルド」 ・ワーグナー…歌劇「タンホイザー」序曲(吹奏楽版) CD ・大栗祐…吹奏楽のための神話 ・櫛田てつ之扶…飛鳥 ・ネリベル…2つの交響的断章 ・J・シュトラウス2世…常動曲 作品257(吹奏楽版) ・リスト…交響詩「前奏曲」(吹奏楽版) ・ハルヴォルセン…ロシア領主たちの入場行進(吹奏楽版) ・ベルリオーズ…葬送と凱旋のための交響曲より第3楽章「アポテオーズ」 ・アルフォード…行進曲「ナイルの守り」 |
− | 大阪フィル | − | − |
CD | Pony Canyon | PCCL-00478 | HDCD |
演奏について
ポニーキャニオン全集のバラ売りがプライスダウンされHDCDで発売された際、この全集から聴き所を抜粋したもので、監修は宇野功芳が行っている。 全曲からチョイスされていてバランスは良いと思われるが一部マニアックなものもあって宇野節が炸裂しているのも面白い。 ブルックナー初心者に薦められるかときかれると少し首を捻ってしまう。 |
1994.7.24 L | 大阪フィル | サントリーホール | − |
CD | Pony Canyon | PCCL-00345 | |
演奏について
8番におけるハース版とノヴァーク版との比較を行っているCD。ハース版代表は朝比奈/大阪フィル(94年)となっているが、比較対象が宇野功芳/新星日本響なので、演奏の出来も曲へのアプローチの仕方も全く違うので余り比較にはならない。 比較方法は相違のある部分をその部分だけ交互に聴かすもので、細かい解説はライナーに記載されている。その比較箇所は1楽章が少しで、後は3・4楽章中心となっており、CDの最後には宇野による第3楽章全部と朝比奈による終楽章全部が収録されている。 このCDは両版の違っている部分だけを耳で比較してみたいという奇特な方以外は必要のないものと言える。 |
《 総 評 》
テ・デウムを除くと、ブルックナーの交響曲以外の曲についてはほぼ全てが録音されていることには驚きでした。
日本ブルックナー協会盤についてはこのLPを所有されている方のご好意により、聴くことが出来ました。重ねて御礼申し上げます。
未聴の曲が関西6大学合唱演奏会のカセットという非常に手に入りにくいものが残りました、哀れだと思った方はオリジナルでなくても全く構いません、なにとぞご協力をお願いいたします。
当ページで使用した略称
・大阪フィル=大阪フィルハーモニー交響楽団
・新日本フィル=新日本フィルハーモニー交響楽団