比較的何度も(生涯で6回)演奏会で取り上げてはいるもの、録音としては積極的ではなく、全集でもない限り録音をしようとは思わなかった感じを受ける6番です。
曲自体は前期を総決算する5番の後、弦楽5重奏曲を挟み後期のスタイルを模索しているものですが、使用される旋律がどれも非常に魅力的で、特に第2楽章の哀愁は得も言われぬものを持っています。
1977.9.1 L | 大阪フィル | 東京文化会館 | ★★★★ |
LP | ジャン・ジャン | JJ-1600/16 | 全集・限定盤 |
CD | ジャン・ジャン | JJ-008/019 | 全集・限定盤 |
CD | グリーンドア | JJGD-2001/17 | 全集・限定盤 |
演奏について
遅いテンポでじっくりと進められる演奏で、沈み込むような表情があり、ほの暗い情感と力強さを持っている。 オケのアンサンブルはジャンジャン全集の中でも最も良くない部類に入るのが残念だが、音楽の流れは良く、各楽章ともツボにはまった盛り上がりをしているので、曲の最後まで聞き入ってしまう演奏となっている。特に終楽章の展開の妙はぐいぐい引き込まれてしまうもので非常に魅力的だ。またコーダでの思い切ったテンポダウンは思わずビックリしてしまう程の強烈なインパクトがある。 ただその終楽章のコーダが、かなりの迫力を持っているもの、各旋律線が非常に混沌としたまま聞こえてしまうのがやや難点だ。 |
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録音について
オンマイクのセッティングで、やや左右の広がりは狭いもの、臨場感に優れており、非常にスッキリとしていて見通しの良い録音となっている。 |
1984.1.28 L | 東京交響楽団 | 東京文化会館 | ★★★ |
CD | Victor | VICC-40190/9 | 全集 |
CD | Victor | VICC-60281/91 | 全集 |
演奏について
これまでの演奏をまとめて2回目の全集が作られる際に初めて発表された演奏。 基本的な解釈に変化は感じられないが、ジャンジャン盤と比べてずいぶんとテンポが速くなり、音楽に流れるような流暢さが生じている。また曲の構成感が更に洗練されてまとまりが良くなり、全体に貫禄を感じさせる。 オケの方もジャンジャン盤とは格段の安定感があり、安心して聴いていられる。特に第2楽章のしみじみとした情感はいつまでも浸っていたい気分にさせる。 ただ終楽章のテンポが朝比奈にしては速く、性急で幾分深みに欠けると感じる所があることがマイナスだ。 |
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録音について
音の分離が良く左右に良く広がり、奥行きも感じることの出来る録音だが、音の抜けが良くなく、ベールを1枚掛けたような印象がある。 |
1994.4.1-4 | 大阪フィル | 大阪フィルハーモニー会館 | ★★★★★ |
CD | Pony Canyon | PCCL-00318 | |
CD | Pony Canyon | PCCL-00400 | 全集 |
CD | Pony Canyon | PCCL-00474 | HDCD |
演奏について
落ち着いたテンポを採り、音楽の推進力が非常に力強い。 対位法を構成しているすべての旋律が対等に鳴り響いていて、重層的な響きを創り出しているが、響きそのものは非常に明晰で見通しが大変良い。また音楽に深いコクがあり、第2楽章ではしみじみとした哀愁のこもったものとなっており、非常に魅力ある演奏となっている。 問題の終楽章も混乱せず、そして緩まず、最後まで楽しく引きつけられる出来となっており、この6番を聴く愉しみに満ちたものとなっている。 |
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録音について
ノーマルの方は左右への広がりが良く、奥行きも感じさせる録音だが、音にベールを被せたような明晰さなため、全体としては普通の録音と言える。 一方、HDCDの方になると、音の明晰さも上がり、もやっとしたイメージは後退する。 |
《 総 評 》
曲へのアプローチは3種類とも全く変わらないと感じましたが、コクの深さでキャニオン盤がダントツのお薦めとなります。
当ページで使用した略称
・大阪フィル=大阪フィルハーモニー交響楽団