日本におけるブルックナー演奏の第1人者だった朝比奈でしたが、交響曲の日本初演はこの1曲だけです。しかし後年はレパートリーから外してしまって、4回目となる82年の札幌響との演奏以来、この曲を取り上げることはなくなってしまいました。
1978.6.5 L | 大阪フィル | 大阪フィスティバルホール | ★★★★ |
LP | Victor | SJX-9523 | |
CD | Victor | VICC-40190/9 | 全集 |
CD | Victor | VICC-60281/91 | 全集 |
演奏について
全集の中に入れられた唯一の録音で、この録音が収録された全集は0番までが入っている全集としては世界最初のものだった。 1番と2番の間に成立したシンフォニーなだけに、響きは完全にブルックナーのもので、この演奏も骨太で重心が低く、ダイナミックで雄大な響きがしており、この作曲家の世界にひたる喜びを与えてくれる。また踏みしめるようなリズムの刻みと楽想のスムーズな切り替えがしっかりしているので、非常に安定した曲の進行がある。 コーダに向かって大きく確実に登り詰めていく緊密な構成が大変素晴らしく、最後まで楽しくこの曲を聴かせてくれる。 |
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録音について
かなりのオンマイクだが、音の鮮度は良く、分離の具合も良好だ。また奥行きもこの全集にしてはしっかりと感じさせるもので、非常に優れた録音と言える。 |
1981.10.8 L | 大阪フィル | 大阪フィスティバルホール | ★★★★ |
CD | TAKASHI ASAHINA SOCIETY | TAS-002 | 自主制作 |
演奏について
1869年版にノヴァークの改訂報告(1981年1月発表)を参照した演奏で、世界初演となった。 やや速めのテンポが採られているが、悠然とした歩みを持つ堂々としたスケールで曲が進められる。 演奏自体が荒々しいところのない、非常に熟成された印象を与え、この曲がブルックナー初期のものだと言うことを忘れさせてくれる。 特筆すべきは第1楽章であり、この楽章中劇的に盛り上がる所があり、強く引き込まれてしまう魅力に溢れている演奏と言える。 |
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録音について
自然な音の広がりや奥行きを感じさせる素直な録音。楽器の位置が把握出来る程度の分離は出来ているが、ダイナミックレンジは狭く、最強音での迫力はいまひとつとなっている。 |
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同時収録
・ブルックナー…序曲ト短調 |
1982.5.12 L | 東京都交響楽団 | 東京文化会館 | ★★★★ |
CD | fontec | FOCD9230 | |
演奏について
生涯3回目の演奏で、この後21日の札幌響との演奏が最後となった。 0番と言いながら1番の後に成立したシンフォニーにふさわしく、スケールの大きい恰幅のよい音楽となっている。 オケの方も低音から分厚く鳴り、金管が思い切りの良いプレイをしており、響き全体に若々しさがある。 全体を緊密にまとめながら、要所々々でのダイナミックな表現は大変聴き応えがあり、特に第1楽章後半での劇的な盛り上がりはとても良い。聴き終わった時の充実感は1番・2番に対して劣ることのないものがある。 |
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録音について
音のエッジが丸くなってしまっているが、音色のバランスは極めて自然で、左右の広がりも十分だ。また客席のノイズや文化会館のモコモコした残響がステージの音に被っている様子をそのまま収録しているので、細かい修正はほとんどしていないと思われる。 |
《 総 評 》
0番が予想以上に素晴らしい演奏で、78年の演奏はビクター全集の中でも非常に出来の良い演奏だと思いました。後年レパートリーから外してしまったのが残念に思います。
81年はさらにスケールの大きくなった演奏で、非常に聴き応えがありました。82年も同様ですが、練りこまれた大阪フィルの音色と違うフレッシュな響きが違う個性を出していました。
当ページで使用した略称
・大阪フィル=大阪フィルハーモニー交響楽団